研究課題
前年度に実施した予備研究結果を基に作成した認知課題を用いて本実験を行い、眠気のエラーモニタリング機能に与える影響が、エラーの大きさによって異なるかを検討した。睡眠障害の訴えのない男性若年成人12名が昼間条件と夜間条件の両方に参加した。昼間条件では、実験参加者はAM 10:00 (Session 1)および PM 0:00 (正午; Session 2) から、各1時間半程度、実験室内で認知課題に取り組んだ。夜間条件では、自宅でPM 11:00~AM 7:00の睡眠をとった後、睡眠をとらずに深夜 (AM 2:00; Session 1) および明け方 (AM 4:00; Session 2) に認知課題を実施した。認知課題は、移動する四角を指定された範囲に停止させるというものであった.課題中には,脳波を頭皮上23箇所から左耳朶に装着した電極を基準電極に用いて記録した。分析では停止位置と指定範囲とのズレの大きさによってエラー反応を大・小に分類した。検定の結果、大エラーと無反応の回数は夜間条件で増加していたが、小エラーの回数には有意差が認められなかった。反応をトリガーとして脳波を加算し、P3振幅を条件間で比較したところ、小エラー時の振幅にのみ条件間で差が認められ、夜間条件でその振幅が低下していた。この結果は、眠気の強い状態では、小さなエラーに対して十分な注意をはらえなくなる事を示唆している。この事は、小さなミスに気付き、大きな事故につながる前に適切な方略 (休憩の取得など) をとるということが、眠気の強い際には難しいという可能性を指摘するものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
前年度の予備実験の結果に基づいて作成した課題とパラダイムを用いて、データ取得の大半を終えることができた。また、基礎的な解析も行い、ほぼ仮説通りの結果を得ることができた。
今後、4~6名程度のデータを追加する予定である。また、研究結果を学会で発表し、関連分野の研究者からの意見を聞く。特に、本研究で用いた課題中の事象関電位の解釈に関しては、関連分野の研究者とディスカッションを行う必要があると考えている。これまでの解析の結果、眠気の強いときには小さなエラーへの注意配分が減少するという事が示唆された。今後は、認知課題のパフォーマンス、事象関連電位の両方について詳細な解析を行い、その注意配分の減少が、どのように認知課題の成績に影響しているかについて検討していく予定である。また、課題成績の自己評価についても分析を行う。解析終了後は、データをまとめ、国際誌に投稿する予定である。
研究費の一部は、実験参加者への謝礼に充てられる。また、詳細な分析を行うための分析用ソフトおよびPCを購入する。データ追加時の実験補助者、および認知課題成績の詳細な分析の解析補助者への謝金としても使用される。学会参加費用と論文投稿時の英文校閲費も必要となる。また、研究結果を紹介するホームページを作成するためのソフトも購入予定である。
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