研究課題/領域番号 |
23730712
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
畑 敏道 同志社大学, 心理学部, 准教授 (50399044)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 時間評価 |
研究概要 |
研究実施計画では、ラットにおいて時間の長さの記憶形成を測定するための課題の確立と、適切な統制条件をもつ時間評価課題の確立のふたつを目的とした。前者の「時間の長さの記憶形成」を測定するには、まずある時間の長さ(t1)をについての学習が充分に確立した後、学習すべき時間の長さを別の長さ (t2) へと変化させ、時間t2に対する学習が新たに形成される段階を調べる必要がある。このため、ピークインターバル課題を改訂した手続きを用いた。この手続きを"time shift paradigm"と名付け、その有効性について英文論文として公表した(Hata, 2011)。この手続きを用いることにより、時間の長さの記憶をより純粋に測定するための手法が確立された。このことは今後、時間の長さの記憶形成の神経科学的基盤を明らかにするうえで大変重要な意義を持っている。またこの課題を用い、新しい時間の長さの学習に移行する時点でラットの背側線条体にNMDA型グルタミン酸阻害薬を投与した。その結果、薬物投与によって新しい時間の長さの学習が遅延した。また、学習すべき時間の長さを変えずに訓練を継続している際に同薬物を投与しても、時間評価行動にはなんら変化はみられなかった。このことは、時間の長さの記憶形成に背側線条体のNMDA型受容体が関与していることが初めて実験的に示唆された。この成果は第71回日本動物心理学会で口頭発表した(岡・畑、2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、ラットにおいて時間の長さの記憶形成を測定するための課題の確立と、適切な統制条件をもつ時間評価課題の確立のふたつを目的とした。前者については、行動課題が確立されただけでなく、次年度以降に計画していた行動薬理学的な実験も前倒しで実施することが出来たため、計画以上に研究が進行したといえる。一方、適切な統制条件をもつ時間評価課題の確立を行うことはできなかった。その理由は、当初見積もっていただけの研究実施人員を確保出来なかったことによる。やや遅れている計画がある反面、想定以上に進展した計画もあることから、総じて計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
卒業研究の学生や、場合によってはアルバイトの雇用によって、予定の計画を推進する。また、免疫組織化学的手法などについては学内・学外の共同研究者の支援をうける。
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次年度の研究費の使用計画 |
装置や試薬,消耗品の購入、英文論文の校閲作業、実験実施者への謝金、海外・国内での成果発表及び情報収集のために研究費を使用する。
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