研究課題/領域番号 |
23730712
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
畑 敏道 同志社大学, 心理学部, 准教授 (50399044)
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キーワード | 時間評価 / 背側線条体 |
研究概要 |
今年度はラットを被験体として主に以下の4種類の実験を行った。 2つの実験では、時間の長さの記憶形成時における背側線条体内NMDA受容体あるいは同部位での細胞内MAPK/ERK経路の役割について検討するため、新たな時程の弁別を獲得する群と、獲得済みの時間弁別を遂行する群との間で、これらの受容体あるいはタンパクの阻害薬の効果を比較した。その結果、いずれの阻害薬も新たな時間弁別の形成を妨害しなかった。このことは、背側線条体の別の部位にNMDA受容体阻害薬を投与し、新たな時間弁別の形成阻害を確認した我々の先行研究とは異なった結果であった。このことは、新たな時間弁別の形成における背側線条体の役割が、下位部位によって異なる可能性を示唆している。 また、新たな時間弁別獲得時の背側線条体でのc-Fosおよびzif-268発現を、免疫組織化学的染色によって検討した。その結果、新たな時間弁別行動の形成しつつあった群では、既に獲得している時間弁別を遂行している群と比べて、同部位でのc-Fosおよびzif-268発現細胞数が多い傾向にあった。この結果についてはさらに標本を増やして検討する必要がある。 さらに、情動が時間評価に与える効果の神経基盤を明らかにする目的で、まず恐怖・不安が時間評価に与える効果を検討した。その結果、代表的な時間評価課題である間隔二等分課題において、恐怖が条件づけられた音に対して、時間の長さの過小評価が生じることが示された。この結果を基に、今後この減少の神経基盤を探っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画では、25年度に背側線条体でのドーパミンの働きについて検討することにしていたが、グルタミン酸の効果についてより詳細に検討する必要が出てきたため、この計画を変更して実験をおこなった。また、26年度の実施予定であった免疫組織化学的手法による実験を前倒しして実施した。さらに、当初計画にはなかった、情動が時間評価に与える効果を検討する行動実験を実施した。このように、研究の実施内容に変更・前倒し・追加などがあるものの、およそ研究計画にそって研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、当初の計画になくても実施すべきであると判断された研究について、卒業研究の学生、大学院生との共同研究により申請テーマの範囲内で柔軟に研究を進める。また、免疫組織化学的手法などについては学内・学外の研究者の支援を受ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費が予定よりも少なく済んだため。また、旅費、データ分析・論文校閲などの謝金を本研究費から支出しなかったため。 物品費(主に試薬など),論文校閲費などに充てる。
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