本研究では、近代教育思想の祖と評されるルソー(J.J.Rousseau.1712-1778)の教育思想について、それがキリスト教的な倫理観を基盤にして構想されたものであり、宗教なくしては成立し得ない人格形成論であったという観点に立ち、『エミール』を再考した。ルソー生誕300年を記念して新たに刊行されたルソー全集や、ジュネーブで開催されたルソー生誕300年記念事業への参加等を通して、より広範で多角的な視点を得ることができた。結果、『エミール』の続編でありながら、今日まで十分な評価が与えられてきたとは言い難い『エミールとソフィ』という作品に対する再評価の必要性を指摘し、成果報告としてまとめた。
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