研究課題/領域番号 |
23730725
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
七木田 文彦 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40431697)
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キーワード | 養護訓導 / 学校衛生 / 学校看護婦 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度収集した戦時下資料の分析を進めるとともに、戦後教育改革における養護教諭制度の成立過程を中心とした研究を進めた。戦後教育改革期の一次史料は、国立教育政策研究所教育図書館所蔵の重田定正文書(昨年度より継続)と戦後教育資料、筑波大学体育科学系体育社会学研究室所蔵の竹之下休蔵文書(昨年度より継続)、国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHP/SCAP Records,Civil Information and Education Section(民間情報教育局文書)、同Public Health and Welfare Section(公衆衛生福祉局文書)、Joseph C.Trainor Collection(トレーナー文書)、University of Iowa Archives Special Collections(アイオワ大学附属図書館アーカイブズ)所蔵のCharles Harold McCloy Papers(マックロイ私家文書)、国立保健医療科学院研究情報センター図書館所蔵の公衆衛生福祉局(PHW)関係史料、教育刷新委員会教育刷新審議会会議録等を収集し、随時、解読作業を行った。 分析視点については、戦時下改革との連続性と非連続性を考慮しながら、占領軍の影響と日本側の自主改革の調整の中でどのように進められ、制度化されたのかに焦点化して検討した。特に、CIE、文部省体育局、学校体育研究委員会の動向に注目して、制度の形成過程を明らかにした。2年目の研究成果発表は、11月に行われる第59回日本学校保健学会にて「戦時下文部省の養護訓導設置計画」と題して研究発表を行った。同研究論文の執筆と学会論文投稿は、平成23年度からの分析の継続として論文の執筆を行った。次年度投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究計画の2年目にあたり、史的研究アプローチの基礎的作業として一次史料の収集に加え、分析活動を行った。具体的作業・活動は当初の予定通り以下のように進めている。 ①明治期に誕生した学校看護婦が、1941(昭和16)年に新たな教育職員である養護訓導となった発展過程(制度の形成過程)について、学校衛生関係一次史料を中心に収集・読解・史料批判・分析を行った。 ②戦後教育改革によって制度化された養護教諭制度の成立プロセスについて、戦後教育改革各種委員会議事録、関係者メモ等を収集し、読解による分析を行った。 以上の分析視点は、これまで重要な課題とされていながらも、体系的史料の収集が困難であったことから、研究の進展をみなかった領域である。そのため、本研究では、体系的史料群の発掘ではなく、教育関係史料に散在している史料群から、同内容の一次史料を体系的に整理し、分析を進め、データデースの構築作業を行い、その上で、随時、収集した史料、具体的には、文部省内部史料、戦後教育改革期史料や行政関係者の私家文書、メモ書き等の読解と分析によって、当時の議論と制度化のプロセスを同時代的に理解・確認している。さらに、その制度的普及状況の実態を各種学校史料によって確認した。また、上記プロセスを可能にした社会構造の分析も行った。昭和前期から戦時下改革を経て戦後教育改革期に至るまでを社会構造の変遷に注目しながら制度的発展・衰退を確認し、教育改革による養護訓導の成立と戦後養護教諭制度の確立について検討を行った。以上が2年目の到達点であり、おおむね研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度から2年かけての調査・収集を進めてきた戦時下資料と戦後教育改革における養護教諭制度の成立関係資料について、一次史料として、国立教育政策研究所教育図書館所蔵の重田定正文書と戦後教育資料、筑波大学体育科学系体育社会学研究室所蔵の竹之下休蔵文書(昨年度より継続)、国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHP/SCAP Records,Civil Information and Education Section(民間情報教育局文書)、同Public Health and Welfare Section(公衆衛生福祉局文書)、Joseph C.Trainor Collection(トレーナー文書)、University of Iowa Archives Special Collections(アイオワ大学附属図書館アーカイブズ)所蔵のCharles Harold McCloy Papers(マックロイ私家文書)、国立保健医療科学院研究情報センター図書館所蔵の公衆衛生福祉局(PHW)関係史料、教育刷新委員会教育刷新審議会会議録等のさらなる追加資料の収集を行い、随時、解読作業を行う。 平成24年度に学会発表を行った「戦時下文部省の養護訓導設置計画」の内容を中心として、戦後の養護教諭制度の確立過程まで踏み込みながら、学術論文としてまとめ、執筆の上、日本学校保健学会誌「学校保健研究」へ投稿する。さらに、養護教諭制度の成立過程が保健室機能の変容とどのように関連していたのかを分析し、日本教育保健学会誌「日本教育保健学会年報」に投稿する予定である。 以上の全プロセスをまとめながら、研究テーマである「日本における養護教諭制度の成立と保健室機能の変容-キュアからケアへ-」のまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね前年度までの作業を継続させながら、以下のように研究費を執行する。 ①本研究を実施するにあたって、国立国会図書館所蔵の戦後教育改革文書(マイクロフィッシュとマイクロフィルム)の銀塩フィルム複写料(約7000点分)と戦後教育改革史料を中心とした一次史料の複写・借用・郵送料として使用する予定である。 ②都道府県立図書館郷土資料室等に所蔵されている古文書等を複写するためのデジタル化作業と印刷に使用する高性能カラーレーザープリンタートナーの購入、以上の研究史料の整理、データベースの作成に伴うPC記憶機器類の購入、および電子記憶媒体のデータ復元が必要となる。また、複写許可、実際の複写にともなう渡航費、複写料として使用する予定である。 ③本研究は、膨大な史料収集と整理が伴う研究であることから、史料の読解と論文執筆の前段階での、史料整理・データベース入力には、大学院生等の協力が必要となる。そのため、戦時下史料、戦後教育改革史料史料の整理・補助(これに伴うアルバイト料)として使用する。 ④本研究の研究成果は、研究論文として公にすることは当然のことながら、著作として刊行することで、社会に対して研究成果を還元することも目的として研究を行うため、論文投稿料(日本学校保健学会機関誌「学校保健研究」への投稿料)、学会研究発表渡航費(第60回日本学校保健学会(東京)、および、第10回日本教育保健学会(山口)、同学会参加料として使用する予定である。以上、①から④を中心としながら、前年度からの継続として、戦時下改革史料の収集費、学会での研究発表、論文執筆に使用する予定である。
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