本研究の目的は,米国技術教育カリキュラム開発実践史研究の一環として,その前史として重要な位置を占めたとみられるW.E.ウォーナー(1897~1971年)による技術教育のためのカリキュラム開発実践史とその技術教育史的意義を明らかにすることである。平成25年度の研究課題は,①ウォーナーの教育研究活動に関する資料の補完的収集,②アメリカ産業科教育学会の設立と展開に関わるウォーナーの教育研究活動の分析の2点であった。 ①ウォーナーの教育研究活動に関する資料の補完的収集 上記資料に関しては,オハイオ州立大学付属図書館に所蔵されていたアメリカ産業科教育学会の年次大会の議事録を,新たに収集することができた。 ②アメリカ産業科教育学会の設立と展開に関わるウォーナーの教育研究活動の分析 ①の資料の分析によって,アメリカ産業科教育学会が,イプシロン・パイ・タウというフラタニティを母体として1939年に設立され,その後,当該分野におけるカリキュラム開発の試行に積極的に取り組み,その到達点として,1947年にA Curriculum to Reflect Technologyを公刊するに至った経緯を明らかにすることができた。A Curriculum to Reflect Technologyは,1947年時点において,当時の産業科カリキュラムの枠組みを批判しつつ,現実の技術を反映した普通教育としての技術教育のためのカリキュラム開発を意図して,通信,建設,動力,輸送,製造という5単元構成と,各単元における学習領域として総計328項目を具体的に提起した。しかし,その内実は,新たなカリキュラム開発理論を提起したものではなく,F.G.ボンサーによる産業科教育論に依拠したモデルカリキュラムという性格をものものであった。これが結果として,その後の当該分野のカリキュラム開発に一定の影響力を与えたと評価できた。
|