研究課題/領域番号 |
23730728
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 一平 東京大学, 社会科学研究所, 特任研究員 (90600867)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知識の獲得 / ウィトゲンシュタイン派的・日常言語学派的概念分析 / 概念分析としての相互行為分析 / 社会化 |
研究概要 |
本研究の目的をひとことでまとめるならば、「知識を獲得する」ということが人びとの実際の言語使用のなかでどのように立ち現れ、また扱われているのかを明らかにすることであると言える。この目的を達成するために本研究では、[1]「知っている」などの概念に対するウィトゲンシュタイン派的・日常言語学派的概念分析、[2]小学校における授業場面のビデオデータを用いた(概念分析としての)相互行為分析を行おうとするものである。本年度に関しては3年間にわたる本研究プロジェクトの準備期間として位置づけ、[1]については関連する文献の購入・通読を年度を通して進め、[2]については小学校へのフィールドエントリーを行った。 前者においては「知識の獲得」に関わるウィトゲンシュタイン派的・日常言語学派的概念分析の知見を精査することにより、知識の獲得を「知識を内面に蓄積すること」であると考えることが言語用法上の混乱によってもたらされたものであること、またいかなる混乱からもたらされたものであるのかが次第に明らかになりつつある。後者においては平成23年11月に首都圏にある某小学校に調査への協力を依頼、これを承認していただきフィールドエントリーを完了した。さらにフィールド対象校の計らいで11月より6度にわたって1年生学級に対する予備的な調査を遂行させていただき、2台のビデオカメラを使用した授業場面の録画によりすでに相当量のデータ蓄積がなされている。またこのデータをもとにした相互行為の分析もすでに開始しており、いくつかの知見がみいだされつつある。本年度得られた成果は、平成24年度以降、日本教育社会学会をはじめとした各種社会学系学会大会での口頭発表、および各種学会紀要への論文執筆などのかたちで順次アウトプットしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では平成23年度には、[1]関連文献の収集を進め、同時並行的に「知っている」などの概念に対してウィトゲンシュタイン派的・日常言語学派的概念分析を進めること、[2]授業場面の映像データを得るために小学校に対して調査協力の依頼をし、年度内にフィールドエントリーを行うこと、以上2点を目的としていた。[1]に関しては当初の予定通り順調に進捗しており、[2]に関しては当初の予定通りフィールドエントリーを完了しただけでなくさらに予備調査を遂行するに至り、そこで得られたデータをもとにすでに分析を行いはじめている。以上が「(1)当初の計画以上に進展している。」との自己評価を与えた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には23年度に引き続き[1]関連文献の収集および「知識の獲得」に関わる概念へのウィトゲンシュタイン派的・日常言語学派的概念分析を進めるとともに、[2]年度開始時から小学校での本調査を開始、順次映像データの文字起こしならびに分析を行なっていく。さらに[3]フィールド調査によって得られた映像データについて、対象とする学級の担任をはじめとしたフィールド対象校の教員方とのデータセッションを行い、データへの理解を深め分析を豊穣化するとともに、フィールド対象校へのフィードバックを狙う。平成25年度には[4]映像データの分析を継続し、[5]それまでに得られた成果を日本教育社会学会大会をはじめとした各種社会学系学会大会やエスノメソドロジー・会話分析研究会などでの口頭発表や学会紀要などへの論文執筆を行うことでアウトプットしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記「今後の研究の推進方策」における[1]について、これを遂行するために10冊前後の書籍購入を見込んでいる。[2]については、調査によって得られた映像データを分析するために(1)映像データの文字起こしを行う必要があるが、研究効率を高めるためこれをアルバイトに委任し謝金を支払う予定であり、また(2)データ分析のためデスクトップ型PCおよびMicrosoft Officeなどのアプリケーションソフトを購入する必要がある。また[3]-(1)について、インタビューに時間を割いて下さった教員の方に謝礼として図書カードを用意する予定である。
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