現代の多文化社会において、市民性教育と道徳教育が果たしうる役割と、その限界および留意点を一定程度明らかにすることができた。役割としては、正義とケアの能力の育成や、様々な価値の間で対立が生じた場合に自らのとるべき行動を判断する力の育成、現代の社会の(論争的で)公的な問題に関心を持ち公の場で議論・熟議する能力の育成などについて論じることができた。限界および留意点では、論争的で公的な問題を授業で扱う際に、偏向とインドクトリネーションを避けるため、法的枠組、教師の専門性、生徒自身に偏向を見抜く能力を身につけさせること、教材の問題点の同定に専門家の手助けを求めること、といった対応策が必要であると論じた。
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