研究課題/領域番号 |
23730731
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
遠座 知恵 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (20580864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幼小連携 / 教員養成 |
研究概要 |
本研究は、近年わが国で課題とされている幼小連携の推進に向けた歴史的考察として、(1)19世紀末から20世紀のアメリカにおける幼小連携の推進状況とそれに対応した教員養成改革の動向やその実践、(2)アメリカの改革動向に関する日本の情報収集や、教員養成改革論と改革状況の実態や特質を明らかにすることを目的としている。 本年度は、アメリカで幼小連携の推進に向けた教員養成に先駆的に取り組んだコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジを事例として史料調査を行い、(1)P. S.ヒル着任前の幼稚園科の組織編成とスタッフ、(1)当時のニューヨークにおける幼稚園教員に対する需要(幼稚園数の急増と増設計画)、(3)カレッジにおける幼稚園教員養成に対する反省と課題認識の内容、(4)幼稚園教員養成カリキュラムの編成とその改定(「低学年と幼稚園の指導法」の開設等)、(5)指導者養成クラスの開設経緯とその特質、について明らかにした。また、P. S. ヒルに関する先行研究を整理し、彼女が執筆した雑誌記事などを可能な限り収集した。 日本の事例に関しては、東京女子高等師範学校における教員養成の特質と同附属小学校および附属幼稚園おける幼小連携に関する研究態勢の関係性について考察を行った。同校では、1910年代末から附属小学校でアメリカの幼小連携に関する文献研究を開始し、1920年4月から第3部を改組して実践的研究にも着手したが、教科担任制が導入されたため、それが幼稚園モデルの活動カリキュラムを編成する障害となっていたことを明らかにした。また、その主たる阻害要因として、中等教員養成を目的とする東京女高師の教員養成と附属小学校における教育研究方針の齟齬を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、ごく一部の調査を除き、「研究実績の概要」に示した通り、当初予定していた史料収集やそれらの分析・考察を概ね終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず本年度の研究成果を論文にまとめる。また、本年度遂行できなかった課題として、ティーチャーズ・カレッジのスタッフとなり、幼小連携推進の全米的指導者であるP.S.ヒルの思想形成過程や教育活動、啓蒙活動の実態を明らかにすることを目指す。 その他については、本年度も引き続き日本とアメリカで史料調査を行い、(1)シカゴ大学教育学部における教員養成改革の理念と構想、(2)シカゴ大学教育学部における幼・小を統合した新教員養成課程の創設とそのカリキュラム開発過程、(3)シカゴ大学教育学部付属幼稚園・小学校の教師(カリキュラムを開発者)の学習歴(受けてきた教員養成)と職歴、(4)奈良女子高等師範学校、明石女子師範学校における教員養成のための教育組織とそのカリキュラムの実態等を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
P.S.ヒルに関する調査は、本来は本年度にすべて終える予定であったが、一部の史料調査を実施することができなかったため、次年度に渡米してそれを遂行する。これ以外については、ほぼ当初の計画通り研究費を使用する予定であり、複数回の国内外への旅費が主な用途となる。
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