本研究は、近年わが国において課題とされる幼小連携に関して歴史的考察を行うことを目的とし、(1)19世紀末から20世紀のアメリカにおける幼小連携の推進状況とそれに対応した教員養成改革の動向や教員養成の実践、(2)アメリカの動向に関する日本の情報収集の実態や、日本の初等教育における実践的研究、教員養成改革議論と具体的な改革状況を明らかにすることを課題とした。最終年度である平成25年度は、以下のような調査と分析を行った。 第一に、渡米調査を実施し、進歩主義幼児教育運動の指導者で、幼小連携カリキュラムの開発に主導的な役割を果たしたP.S.ヒルに関する史料を収集した。この調査では、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ着任前のヒルによる教員養成、②同カレッジへのヒルの招聘、③同カレッジにおける教員養成と附属幼稚園におけるカリキュラム開発に注目し、各種報告書や雑誌記事、新聞記事、書簡類、自筆ノートなどを収集した。 第二に、わが国における大正新教育の指導者で、東京女子高等師範学校附属小学校の主事を務めた北澤種一に関する調査を進め、本年度は北澤の遺族に面会して未発掘史料を収集することができた。また、幼小連携カリキュラムに関する北澤の情報源を調査し、彼がアメリカだけでなく、ヨーロッパの実験学校における幼小連携カリキュラムの開発についても研究を進めていたことが明らかになった。 第三に、東京女子高等師範学校附属小学校における低学年カリキュラムの開発に関する調査と分析を進めた。同校では、北澤の指導のもとに、1920年代後半に低学年教育の研究態勢を抜本的に改革して、実践的研究を推進していたことが明らかになった。
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