研究課題/領域番号 |
23730734
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
末松 裕基 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (10451692)
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キーワード | 学校経営改革 / イギリス / スクールリーダーシップ / 学校ミドル / NPM(新公共管理) / アイロニック・アプローチ |
研究概要 |
平成23年度の研究成果をもとに、政策下における教職員の教育活動展開上の現実感覚を捉えるための理論的検討を行った。改革下の教員がどのように働いているるのか、教員が改革とどれだけ距離を取ってやりくりの余地があるかを把握するために理論検討を行った。特に、政策とその帰結の間のギャップが意味することに焦点を当て、学校という特殊な場において、教員が満足や楽観を維持できるのはアイロニックな志向によること、楽観主義者としての皮肉屋の良い所は、希望もなしに、組織生活における固有の曖昧さと状況的矛盾に対して、それらを除くことを望まずに快適に生きていけることの可能性を検討した。その際、 ・「皮肉」の視点を用いることで、多くの教職員が、改革を全面的に否定している訳ではないこと。生徒のニーズに見合うように、政策を媒介しようと試みている可能性があると言える。 ・政策と実施の媒介的過程に着目すると、政策を実施する者への政策決定者による統制は限られたものでしかないことが分かる。ここでは「皮肉」の視点を導入し、教職員が実際は改革下でいかに仕事にアプローチしているかを捉えるための指標を得た。 さらに、政策に対する学校現場の認識と改革の帰結についての資料・データ収集を行った。特に、学校自律化政策の意図せざる状況についてのデータ収集について、政策は分権化を進め、学校に自由を与えようとしているが、多くの校長や教員は、より一層の官僚主義を感じていることなどを先行調査データや訪問調査から整理・検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリスの学校経営改革の特徴やその課題をもとに、学校現場で何が生じているかについて、説明するための理論的検討をおおむね順調にできた。またそれらの理論検討をもとに、実際に学校で教職員がどのような思いで働き、行動しているかについての基礎的な資料・データを収集・検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
教職員による政策に対するアプローチを把握する予定である。多くの教職員が、政策をただ従順に実施しているのではなく、プラグマティックなアプローチを取り、現実的な観点から状況に応じた感覚を持って働いていると言える。「中央・地方の政策」と「学校現場の取り組み」のギャップは、政策過程には固有のものであり、それ故、政策意図と学校現場の認識の差のギャップの程度を調査し、なぜそれが起きるかを説明するためのデータ収集をインタビューにより行い、補足的に質問紙調査を実施する予定である。そこから、教職員による政策の再解釈の実態把握を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には4,951円の残額が出たが、物品購入に際して、消耗品の節約により当初予定より使用数が減ったためである。平成25年度の予算において、消耗品として有効に活用し、今後予定している調査用の物品購入に充てる予定である。
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