研究課題/領域番号 |
23730735
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
辻野 けんま 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80590364)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / ドイツ / 教師教育 |
研究概要 |
ドイツの教師教育改革の現状について全般的な情報収集を行うとともに、教師教育改革の進展が速いニーダーザクセン州およびノルトライン=ヴェストファーレン州について現地調査を行った。その際、日本で教育行政職、学校管理職、教諭等の経験を有する研究協力者とともに、ドイツの大学、教員養成所、学校等を訪問し複眼的分析を行うとともに、日本での教員勤務経験を有するドイツ側の研究協力者との協議を並行して進めた。これらを通じて教師教育の国際化という問題関心からの研究の端緒が拓かれた。 具体的な調査内容としては、ブラウンシュバイク工科大学における第1段階養成の実態調査、ブラウンシュバイク学習ゼミナールにおける第2段階養成の実態調査、ゼーエンデ協働型総合制学校における教員の力量形成に関する実態調査、この分野の代表的研究者E.テルハルト教授への聞き取り調査、ミュンスター大学教員養成センターの訪問、などである。 調査結果について事前の文献研究を照らしつつ現在整理段階にある。このうち、理論的な部分に関しては整理したものを本年度中に原稿化し発表する予定である。また、研究計画に記載していた視聴覚教材製作については年度を前倒ししてすでに着手した。これを日本の教育関係の研究者・実践者とともに分析してくとともに、ドイツ側の研究協力者と内容に関する討議を進めていける段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がとくに重視する教師教育関係者との協働による分析、日独双方の視点からの分析、研究成果の可視化(視聴覚教材化)とそれによる検証、のそれぞれについて、研究初年度としての成果が得られたと考える。これらは研究代表者自身がそれまで未経験だった研究手法であるが、この点では研究実施計画に記載した以上の成果が得られた。 とくに、これまで研究代表者が単独で行うことが多かった現地調査の限界を、本研究において超える実感が得られたことが大きい。具体的には、教師教育改革の制度的側面に力点をおいてきた研究代表者に対して、研究協力者たちは自らのキャリアから独自の分析を行い、それぞれの関心にしたがった質疑を現地において展開した。それらを通じて得られた成果は、インタビューにせよ参与観察にせよ、研究代表者単独では決してなしえなかったものであった。 また、現地調査で接した現場教員や教員養成所の教員などは、同じ教育者としてのシンパシーや専門職同志の共鳴を感じたようであった。これらは教師教育の国際化を標榜する本研究にとっては非常に大きな手ごたえとなった。現段階ではまだ実証できないものの、今後の研究の方向性を見定める判断材料としては貴重な成果である。 一方、予算面での制約から達成が十分でないものもある。たとえば、減額配分にともなって、初年度購入予定だった物品のいくつかが購入できなくなったことで、視聴覚教材製作のための作業に若干の遅れが生じている。 これら進捗状況の全体を俯瞰して、次年度の研究計画に適切な修正を加えながら進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果は細部における課題がでてきたものの、大局においては予想以上の成果をあげている。そこで、次年度以降も全体の研究方針・計画は維持することとする。 つまり、本研究における第一の目的はドイツの教師教育改革の現状とスタンダード化の影響を明らかにすることであるが、そのための方法として日独の教師教育関係者とともに複眼的に比較検証することにある。そのためには、研究成果を原稿化していくことはもとより、視聴覚メディアなどにまとめることで、現場教員などにとっても分析しやすいものとしなければならない。また、視聴覚メディア製作は日本人のみの手では政策困難であることから、日独の研究者の協議を要する。こうした多方面からの分析と検証を要する作業によって、日独の教師教育に関する研究・実践に資するものとしていきたい。 初年度は複数のメンバーによる現地調査を重視したが、次年度は現地調査を研究代表者が行いつつ、逆に現地から研究者の招聘を行うなど、より高次の討議が集中して行えるような研究体制を組む予定である。 また、視聴覚メディアについても初年度に前倒しして試作に着手したが、次年度はこれを一定の形にして、日独の研究者が検討できる水準にしなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度も計画に沿って現地調査旅費に重点をおいて研究費使用を予定している。主な使途は引き続き旅費となるが、今年度は具体的に視聴覚メディア製作を進めなければならないため、そのための必要機器や製作費などが発生する。また、資料集製作に関しても費用が見込まれる。申請予算からの減額がなされていることから、初年度に購入できなかった物品等も発生しており、それらをふまえると本年度は全体として予算不足が予想される。 経費上最大の内訳を占める旅費については、今年度行う現地調査を研究代表者単独によるものとする。また、ドイツ側の研究協力者等1名を日本へ招聘し、日本国内の研究協力者との集中討議の場を設ける予定でいる。これを実現する方向で進めたいが、経費を総合的に勘案する必要があるため、現地調査の形態や研究者招聘についてさらなる検討を行わなければならない。 その他、今年度は具体的な研究成果物(とくに視聴覚メディア)の製作費用等が発生してくるが、その額は現段階で確定していない部分も多い。これについては経費削減をなるべく図れるよう、研究体制を組みなおしていく予定でいる。
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