研究課題/領域番号 |
23730735
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
辻野 けんま 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80590364)
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キーワード | ドイツ / 教師教育改革 / 教師教育スタンダード |
研究概要 |
H.24年度は、ドイツ・ザールラント州、ニーダーザクセン州、バイエルン州等における「教師教育スタンダード」の影響を中心に調査を進めてきた。研究成果の概要は、(1)大学におけるスタンダードの影響に関する事例研究(2大学+2教員養成センター)、(2)試補養成所におけるスタンダードの影響に関する事例研究(2教員養成ゼミナール)、(3)現職研修段階におけるスタンダードの影響に関する事例研究(2教員研修所)、(4)ドイツ教師教育改革に関する視聴覚メディアの試作、(5)中間報告書の作成、とまとめられる。 ドイツにおける教師教育改革は、超州レベルの教師教育スタンダードが大学の教職課程改革およびその評価に直接影響を与えてきたが、ヨーロッパ・レベルでのボローニャ・プロセスからの課程構造改革がこれを後押しする形となり、とくに第1段階の養成現場に先鋭化している(1)。しかし、すでに多くの大学で新課程の修了者が第2段階へと進み、また一部は正式に入職していっている中で、第2段階の養成現場にもスタンダードの影響が見られるようになっている(2)。 しかし、これらと対照的なのは第3段階の教師教育といわれる現職研修であり、ここでは教師教育スタンダードの影響がほとんど見られない(3)。その背景には、現職教員の力量形成がスタンダード化された基準によってではなく、教員自身や勤務校内部のニーズから発せられるべきとの理念がある。また、各州レベルでの争点としては、第1段階の修了をボローニャ・プロセスが求める大学修了試験とするか、それとも伝統的な国家試験とするかなど、対応に州差が見られる。 研究最終年度には、教師教育改革の状況・影響を日独の研究協力者の連携のもと分析した成果を、報告書および視聴覚メディアにまとめる。これら研究の体制と方法の下で進められている点において、本研究の意義・重要性があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてとくに重視しているのは日独の研究協力者との共同による現地調査である。協力者は、日本における教師教育の実務関係者および研究者、ならびにドイツ側の研究者である。このような体制の下、学校・教育行政現場の状況を具体的・複眼的に分析することを狙いとしてきたが、当初最終年度に予定していた研究協力者との現地調査を繰り上げて実施し、基本的な情報収集を終えることができた段階にある点で、予定よりも大きな成果が得られている。 一方、課題としては、州差の大きいドイツにあって、複数州にまたがっている調査が、ますます多様化する現状に必ずしも十分対応しきれてはいない点が挙げられる。その背景には、急速に展開する改革や多様な教師教育の現場の実態もある。 しかし、そのような中でも、(1)教師教育改革について第1段階養成-第2段階養成-現職研修の全段階を包括した事例研究を進めている点、(2)日独双方の視点を反映させた比較研究を進めている点、(3)研究成果を可視化するために報告書のみならず視聴覚メディアを製作している点、などの進展があるため、おおむね順調との自己評価に至った。 これまで収集された情報や討議の結果などは、たとえば、両国の具体的な比較や日本への示唆など多く得るものがあり、改革の全体文脈の描き方についても、多様な研究協力者の尽力に助けられ成果を得てきている。 今後は収集した情報をさらに詳しく分析し整理するとともに、日独の協力者双方の視点を総合させていくことが課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、過年度に収集した情報をさらに深く分析していくことと、研究協力者との協議の下で成果を報告書にまとめていくことが主たる課題となる。同時に、視聴覚メディアの製作においてもこうした協力体制を生かしていくことが求められる。 現地調査として重要なものはすでに前倒しし実施したが、必要に応じて補足調査を行うこともありうる。それ以外では、主としてビデオ会議や電子メールを通じた補足調査がメインとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費(100,000円)の主な使途は報告書製作費および視聴覚メディア製作費に充てられる。
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