ドイツの教師教育は、大学における理論的養成(第1段階)と大学卒業後の試補教員としての実践的養成(第2段階)ならびに入職後の現職研修(第3段階)という専門職養成・研修システムをとってきた。今日、この教師教育制度全体の改革が進行し、とりわけ第1段階を担う大学においてそれが先鋭化してきた。 本研究では、一連の改革について、常設各州文部大臣会議(KMK)による教師教育スタンダード(2004、2008)が連邦規模で影響をもたらしている点に着目し、その実態を明らかにした。同スタンダードの影響は、ボローニャ・プロセスというEUレベルでの力と合流する形で改革を加速化させてきた。そこで、3年間の研究の結びとして、ドイツの教師教育改革の現状を総体としてとらえ、複数の州の関係機関(大学、教員養成所、教員研修所、学校など)における事例を元に教師教育スタンダードの影響の具体をまとめた。 その結果、州ごとや養成機関ごとに多様な状況が存在する一方で(例:第一次国家試験の有無など)、超州的に共通する特徴も存在することが明らかになった。具体的には、(1)スタンダードの影響は第1段階養成を担う大学に先鋭化していること、(2)スタンダードは学修課程のモジュール化やアクレディテーションに影響していること、(3)第2段階養成を担う試補教員養成所へも影響の一部が及んでいること、(4)第3段階の現職研修にはスタンダードの影響が見られないこと、などが挙げられる。そして、教師教育スタンダードに基づく一連の改革に対しては、一部の批判がありつつも総じて大きな障壁なく改革が進行してきている状況が明らかになった。以上の研究成果については国際教師教育学会(ISfTE)において研究発表を行うとともに、中間報告書にまとめ発行した。(なお最終報告書については現在作成途上にある。)
|