平成25年度は以下の作業を行った。 (1)婦人教育・家庭教育・純潔教育に関する実践記録分析:戦後の社会教育行政の範疇で行われた婦人教育・家庭教育・純潔教育に関する実践記録を収集し、その内容におけるジェンダー・ポリティクスを分析する。婦人教育に関しては、1954年度から56年度にかけて行われた稲取実験婦人学級に関する実践記録がNWEC女性アーカイブセンターに所蔵されているほか、『婦人学級事例集』(文部省社会教育局、1960-74)、伊藤雅子らによる女性問題学習の記録を用いた。家庭教育に関しては、1963年度から文部省が全国に奨励した家庭教育学級の実践記録として、『家庭教育学級の現状』(文部省社会教育局、1966-67)のほか、自治体レベルで刊行された報告書およびそれらを分析した研究を検討した。純潔教育に関しては、文部省社会教育局および社会教育連合会によるテキストを参照した。 (2)NWEC事業の実践記録分析:婦人教育政策とジェンダー平等政策の結節点として、NWECにおける事業内容の変遷とそこでの実践の分析は重要である。NWEC女性アーカイブセンター所蔵の各種事業報告書、研修参加者による記録等を収集し、NWECの展開した事業内容と婦人教育課における政策との関係を明らかにし、NWEC事業がジェンダー平等の推進にとってどのような役割を果たし、またどのような限界を有してきたかについて検討した。 以上の作業をふまえ、学校教育から疎外されてきた女性にとって、社会教育は重要な学習機会であると同時に学校教育に代わる社会化エージェントである。女性を対象とする社会教育は、国家にとって「のぞましい女性像」をあてはめる側面と、性差別に気付き、変革を目指そうとする女性解放のツールとしての側面があり、この両者の思惑が交錯する政策領域であることを指摘した。
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