研究課題/領域番号 |
23730743
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
臼井 智美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30389811)
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キーワード | 外国人児童生徒教育 |
研究概要 |
本研究では、外国人児童生徒の指導に必要な力の習得を支援する方法を、教員研修に焦点を当てて明らかにするものである。指導力の習得に効果的な支援方法が、教員の職能成長段階によって異なるのではないかとの仮説を立て、その検証を行っている。平成23年度の研究では、職能成長段階を学級担任経験に着目して区分したが、平成24年度の研究では、校務分掌経験に着目して職能成長段階を区分した。 公立小・中学校の教員(日本語指導担当教員および学級担任)を対象にして聞き取り調査を行い、その教員が身につけた外国人児童生徒の指導に必要な力が、校務分掌経験の違いによってどのように異なるのかを検討したところ、日本語指導が必要な外国人児童生徒の日本語指導を担当する「日本語指導担当」とか「国際教室担当」という分掌を経験した教員は、それらの分掌を経験しない教員よりも、顕著に外国人児童生徒の指導に必要な力の習得度が大きいことがわかった。 しかし、力の習得は、「日本語指導担当」や「国際教室担当」という分掌を担当したことのみで促進されたわけではなく、この分掌に就いたことで、他校の日本語指導担当の教員と情報交換をしたり授業を参観しあったりといった機会が増えたことにより、自分の指導を振り返る機会に恵まれたことが大きな要因の1つとして挙げられることがわかった。また、こうした外国人児童生徒の指導を直接担当する分掌だけでなく、研究主任や研修主任といった授業研究を担うような分掌や、特別支援学級担当といった立場を経験した教員も、そうでない教員よりも、外国人児童生徒の指導に必要な力の習得が速やかに行われていることがうかがえる結果となった。 今後は、こうした分掌経験を代替しうる方法について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は、外国人児童生徒の指導に必要な力の習得に効果的な教員研修教材の開発を行うことである。 平成24年度の研究では、日本語指導担当教員や学級担任教員を対象に聞き取り調査を行い、外国人児童生徒の指導に必要な力の習得状況に差があるかを検証したが、それと並行して、これらの教員に対し、試みに数種類作成した教員研修教材を試行してみた。試行のねらいは、校務分掌経験が異なると、教員研修教材の効果が異なるのかについての、予備的データの収集である。 聞き取り調査と並行して教員研修教材の効果を検討することができたため、教員研修教材の修正を加えながら、追加の聞き取り調査を行うこともできた。これによって、平成25年度以降に予定している、職能成長段階に応じた教員研修教材の開発に必要な基礎データを整えることができた。今後の研究が円滑に進むことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、平成23年度と24年度に、学級担任経験と校務分掌経験に着目して、外国人児童生徒の指導に必要な力の習得過程がどのようになっているのか検討してきた。その結果、諸経験により身につける力には差があるが、これらの差を埋めていくために教員研修教材として、どのような内容や方法が有効なのかを明らかにしていく必要がある。 今後は、教員がさまざまな職能成長過程を経て身につける力の差を小さくするための教員研修教材の開発を試みる。実際に小・中学校の協力を得て試行し、教員研修教材の効果の検証を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費のうち、年度末(3月)に行った聞き取り調査に伴う出張の旅費計算において、概算時と精算時で差が生じ、若干の繰越金が発生した。この繰越金については、平成25年度の研究において、新たな調査出張の際の旅費として支出する予定である。
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