研究課題/領域番号 |
23730749
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
遠藤 野ゆり 法政大学, キャリアデザイン学部, 講師 (20550932)
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キーワード | 地域の子育て / ナナメの関係 / 電話相談 / 児童虐待 / 子どもの貧困 |
研究概要 |
当該年度の主たる活動は、調査先「チャイルドライン(以下CL)」の世界初の組織であるイギリスCLと、その母体であるNSPCCを訪問し、組織の運営者ならびにボランティアのメンバーにインタビュー調査を行ったことである。また、日本のCL運営者に、現況の問題点についてインタビュー調査を行った。 日本のCLはイギリスのものをオリジナルとしながらも、ヘルプライン(緊急時に警察などに通報できる)であるイギリスとは性質を異にしている面もある。昨年度までの調査で、日本のCLでは、ヘルプラインとしての機能を持ち合わせていないことが、組織の重要な意義であると同時に、ボランティアにとってのストレスともなっていることが明らかになった。そこで、ヘルプラインであるイギリスのCLではボランティアにかかる負担がどのように異なるのかを、インタビューによって調査してきた。具体的には、イギリスにある4つのCL基地局それぞれで、ボランティアがかかえるストレスにはどのようなものがあるのかの聞き取り調査、実際にヘルプラインとして出動する必要性の回数などのほかに、ボランティアの研修の内容や実施の方法、運営上の困難、財政上の工夫を調査してきた。 イギリスは日本よりはるかに格差社会であり、また移民の流入によって地域での「ナナメの関係」づくりが困難になっている。他方で、古くから、民間団体が家族や子どもを支援する仕組みづくりも整っている。日本社会が欧米並みの格差や相対的貧困を抱える傾向にある中で、イギリスのオリジナルの仕組みづくりと、その結果としてのボランティアの感じるストレスフリーな体験とを検証することは、日本におけるナナメの関係づくりにおいて欠かせない取組であった。 日本でのインタビュー調査では、こうした調査内容を踏まえて、日本のCLでの課題との比較検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に計画通りに進行している。イギリスチャイルドラインでの調査では、想定していた以上のボランティアから話を聞くことができた。この結果、イギリスチャイルドラインと日本のチャイルドラインの実情に関して比較検証をすることを優先的に行う必要があると判断し、日本のチャイルドラインでは、運営者と共に検討会を重ねてきた。現在はその成果を著作としてまとめている最中である。他方で、そのために、日本のチャイルドラインでのボランティアに対するインタビュー調査に割ける時間が減ってしまった。当該のチャイルドラインで、新しいボランティアを募集した時期とも重なり、一時的に、インタビュー調査が実施できなかった。この点は、最終年度に、新しいボランティアにもインタビュー調査を実施することで、今年の不足を上回る聴きとり調査ができる見込みとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度のため、研究のこれまでの取りこぼしを回復することも含めたまとめの方向にいく。 受け手への継続的な聴きとり調査は年度の前半にかけて行い、後半はこれまでの調査結果も含めて、考察する。イギリスチャイルドラインと日本のチャイルドラインの運営やボランティアの状況を比較検討し、論文および著作としてまとめる。その際にこれまでおこなってきた現象学に関する文献講読の成果をふまえる。なお、イギリスでのチャイルドラインの普及度と日本のそれとを比較するために、イギリスでのアンケート調査と小学校でのインタビュー調査を補足的に行う。文献的に研究してきた現象学の対話論に基づき、上の点を総合的にまとめて報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
インタビュー調査は謝金とテープ起こしのために15万円ほど必要である。イギリスでの調査のために、旅費やアンケート集計費等で50万円ほど必要である。文献の購入に10万円ほど必要である。報告書の作成に10万ほど必要である。
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