本研究では、子どもが他者と共同的に生きられるようになるまでを支えるおとなのボランティアの関わりを、「ナナメの関係」という視点から描いている。その中では特に、子ども向けの電話相談事業に着目し、その取り組みや、子どもを支えるうえでのナナメ関係を生きるボランティアの葛藤を描いてる。 この事業のオリジナルであるイギリスの事業について、前年度に調査をしたところ、ボランティアが抱える葛藤は日本のそれとは大きく異なり、ボランティアへのサポートが手厚いことが分かった。そこで25年度は、イギリスの取り組みをさらに調査した。また、イギリスにおいてこの事業がどのように普及しているのかを、イギリスの小、中学校で調査した。その結果、ボランティアにとって大きな負担となる、子ども以外からの電話に対する対処の仕方を専門的に学べることや、講義型ではなく実践型の研修であり有益な内容だということが明らかになった。さらには、研修が平日も含めて頻繁に開催されており、参加を希望するボランティアにとってアクセシブルであることが明らかになった。こうした調査結果は、日本の電話相談事業の促進に大きな意義があるといえる。 またイギリスの小学校では、当該の電話相談事業のポスター等が学校に貼られており、子どもたちにも十分その名前や意図が浸透していることが明らかになった。こうした、内側からのサポートと外側の広い社会的認知によって、イギリスのボランティアがうまく機能している秘訣が明らかになった。 あわせて日本の状況として、被虐待環境から児童福祉施設に逃れた子どもたちの学習環境や遊びの環境をフィールドワークで調査した。そこで、学校教員や施設職員が、通常の家庭、学校におけるおとなと子どもの関係よりも、よりナナメの関係を生きている状況が明らかになった。こうしたありかたを、フッサールの相互主観性理論に基づき、考察している。
|