研究課題/領域番号 |
23730750
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
柳林 信彦 高知大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30516109)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分権改革 / 学校改善 / 教育委員会 / アメリカ教育改革 / ケンタッキー州 / 学区教育委員会 |
研究概要 |
まず、効果的な学区論とシステミック・リフォーム・コンセプトについての研究資料の収集と検討を行い、分権的教育改革の新たな展開を効果的に分析するための視点を構築を行った。 主として、マーシャル・スミスとリンダ・ダーリングハモンドの議論を参考にしつつ、アメリカの教育改革の新しい展開に関して、(1)新しい改革コンセプトに求められる条件、(2)新しいコンセプトととして捉えられるシステミック・リフォーム・コンセプトの特徴、(3)先駆的な事例と捉えられるケンタッキー州教育改革法の分析を行い、論文としてまとめた(柳林信彦「アメリカ合衆国における教育改革の新しい展開に関する一考察-システミック・リフォーム・コンセプトとケンタッキー教育改革法(KERA)に着目して-」、『教育行政学研究』、第33号、2012年5月)。 次に、ケンタッキー州の実地調査を行い、教育政策改革に関する州法制、教育改革政策評価に関する資料の収集と分析を行い、ケンタッキー州教育改革法のアカウンタビリティ施策の特徴をシステミック・リフォーム・コンセプトという視点から解明し、論文としてまとめた(柳林信彦「Kentucky Education Reform Act 1990におけるアカウンタビリティ施策の特徴-システミック・リフォーム・コンセプトという視点から-」、『高知大学教育学部研究報告』、第72号、平成24年3月)。 最後に、得られた研究成果の社会への発信として、研究から得られた分権改革期の学校に求められる組織的力量の形成に関する知見を活用して、高知県須崎市立南中学校で校内研修改革を支援するとともに、その中心部分を論文としてまとめた(柳林信彦、島田希「校内研修システムの改善プロセスに関する一考察 -『教科指導エキスパート派遣事業』実施校の事例をもとに-」、『高知大学教育実践研究』、第26号、平成24年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度中の計画の最も中核であった、「分権的教育改革の新たな展開を効果的に分析するための視点を構築」と「ケンタッキー州の教育改革に関する政策分析」については、それぞれに関して当初予定していた形で文献・一次資料の収集・分析を行うことができ、一定の知見を得ることができた。得られた研究知見に関しては、2本の学術論文としてまとめて発表できた。 特に、本研究の分析全体に関わる「分権的教育改革の新たな展開を効果的に分析するための視点」に関して、システミック・リフォーム・コンセプトに注目しながら構築できたことは、24年度の研究計画が滞りなく実施することの基盤ができたことを意味している。 また、そうして得られた研究視点に基づいて、ケンタッキー州の教育改革政策の分析にも着手することができており、23年度の計画において最も中心的な2つの研究課題に関して一定の成果があがっていることは、研究が順調に進展していることの証左といえるだろう。 さらに、得られた研究成果の社会への発信も、研究計画書の「研究成果の社会への発信」の部分に記載したように、分権改革期の学校に求められる校内研修改革支援を本研究の知見に基づいて実際の学校現場で実現することができ、その中心部分も論文としてまとめることもできている。 以上のような23年度に達成された研究成果に鑑みれば、本研究は当初の計画の通りに24年度の研究が進められるものとなっており、現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているものということができると考えられよう。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、大きく3つの課題の解決を予定している。 まず、第一に、23年度に構成した「分権的教育改革の新たな展開を効果的に分析するための視点」をより精緻化する。「効果的な学区」論は研究蓄積が始められたところであり、国内ではほとんど報告されていないことから、最新の研究動向を把握する必要があり、引き続き関連文献の入手と検討に当たる。23年度では、システミック・リフォーム・コンセプトに注目した考察が一定程度の成果を挙げていることから、24年は、効果的な学区論に注目し、両者を合わせて、研究視点の精緻化を進めていく。 第二に、ケンタッキー州の分権的な改革政策の事例分析のために、二次調査を実施すると共に、必要に応じてニューヨーク、イリノイ州の調査も行う。ケンタッキー州教育省、学区教育委員会への継続的・補足的な調査を行う。ケンタッキー州に関しては、23年度において、アカウンタビリティ施策の分析が終わっていることから、カリキュラム改革や教員改革、全体的な組織改革のあり方を解明するとともに、改革の全体像を研究視点に基づいて明らかにする。また、イリノイ州、ニューヨーク州の改革政策との比較を通して、ケンタッキー州の教育改革戦略の特徴を解明する。以上2つの課題の解明を24年度の前半から中頃にかけて行う。 24年度後半においては、「分権的教育改革の新しい展開における学区教育委員会の在り方」の解明に当たる。ここでは、特に、「分権改革の新たな展開の中で進められている学区教育委員会の役割の再定義」と「新たな展開において形成されている改革戦略の構造的特質」を解明する。 これらの検討を通して、最終的には、分権的教育改革の中で、学力向上や学力格差の解消に取り組まなくてはならない状況にある日本の教育委員会が、効果的な教育委員会となるための組織機構改革の方途について解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について、6万円程度の未執行額があるが、これは、文献及び資料の収集が当初の計画よりも若干遅れたことによるが、このことは、23年度の研究計画の推進には大きな支障を与えていない。ただし、全体の研究計画の推進には当該資料等の収集も必要であるため、未執行額は24年度中に文献資料の収集に使用する予定である。また、それを除いて、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
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