本研究の主要な成果は以下の通りである。(1) 近年のアイルランド教育史研究の動向を概観し、従来強調されていた国家介入ではなく、宗教団体や任意団体により多くの注意が向けられていることを明らかにした。(2) この研究動向は、国家主導のアイルランドと任意団体主導のイングランドという従来の定説に対して、両者の構造的類似性を示唆しているという、教育史学史的意義を明らかにした。(3)「反悪徳キリスト教知識儀礼普及協会(APCK)」の事例研究を行い、その近代的でリベラルな性格を明らかにした。また、この団体への公的補助を、アイルランドの安定的統治という観点から説明した。
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