英語能力や学力の向上に成果をあげている双方向イマージョン(TWI)プログラム実施学校(効果のあるTWI実施校)を、通常の公立学校(PS)、オールタナティブ・スクール(AS)、チャーター・スクール(CS)ごと選定し、各校への訪問調査を通じて、人事、予算、カリキュラム編成等における学校の自律性の違いに着目して、学校と諸アクターとの関係を考察した結果、以下のことが明らかとなった。PSが予算編成、人事における学校裁量が保障されている場合、TWIの実施が学区政策に明確に位置づけられることによって、学校の自律性がTWIの実施に有効に機能する外部環境が整った状況であると言える。このような状況においては、就学手続き、教科書・教材の確保などを学区教育委員会が負担することで学校経営上の負担が軽減され、学校に求められるアカウンタビリティを果たすことにより注力することができることが明らかになった。カリフォルニア州で言語マイノリティの大多数を占めるヒスパニックを主な対象としたスペイン語のTWIとは異なり、中国語やモン語のTWIの創設・実施には、教員や教科書・教材の確保等が困難である。しかし、学区教育長のイニシャティブのもとTWIが積極的に推進されているサクラメント市統合学区では、サンフランシスコ市の経験・ノウハウの導入、海外からの教材確保などにより、TWIを実現している。また、全米で二校目のモン語のTWI実施校(Susan B. Anthony小学校)では、モン・コミュニティ全体の経済社会状況の改善をめざす中心的な事業としてコミュニティのリーダーでもある校長が学区のTWI推進の中心人物として強力なリーダーシップを発揮しすることでその実現が図られ、成果があがりつつあることが明らかになった。
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