本研究は、「平和の概念は多様である」との前提に立ち、多様な平和の概念を対立関係から調和関係へと導くためには、どのような教育的アプローチが必要とされているのか、という問題に教育哲学の視点からの応答を試みるものである。わが国のみならず多様性を認めてゆくことは市民社会の原則であるが、多様性の間を取り持つ教育的アプローチは何か――沖縄戦と沖縄基地問題に関する学習(以下オキナワ平和学習)の事例を通して「本土の人」「沖縄県民」「アメラジアン」それぞれの視点を手がかりにして見つけだすこと――これが本研究の基本的関心である。 最終年度に実施した研究の成果は以下の四点にまとめられる。第一に、5月にアメリカ合衆国、サンフランシスコで開催された国際学会(American Educational Research Association:以下AERA)から招へいされたため、こちらの学会において最終報告を英語でおこなった。特記すべきこととして、AERAの平和教育の研究グループから実際は、paper sessionとしての招聘を受けたが、学会側の手違いでround tableにおける発表に変更されたことである。第二に、昨年度の九月にアメリカ合衆国アラバマ大学のジョン・ペトロビック博士より市民教育に関する書籍(Citizenship Education around the World: Local Contexts and Global Possibilities)の日本の一章を担当してほしいとの執筆依頼を受けたため、本研究の最終報告書としての論文の掲載先は決定していたが、5月に開催されたAERAにおける最終報告の発表への批判やフィードバックを踏まえたうえで、推敲を繰り返し最終稿を提出した。著作は、来年度6月に出版予定である。
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