研究課題/領域番号 |
23730773
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
龍崎 忠 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (80340389)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 希望 / デューイ / プラグマティズム / 人間形成 |
研究概要 |
本研究は、希望を主題とする道徳教育論を形成しその実践を省察的に創造する目的で展開されるものである。人間形成における希望を正当に評価し、人としての在り方や生き方に不可欠なものとして位置づけることは、道徳教育が引き取るべき急務の課題である。平成23年度は重点的な課題を「希望の道徳教育論の原理・土台の構築」と定め、以下の2点を中心に展開した。 1つは文献研究として、ケアの倫理の思想家であるノディングズ、希望を再評価してデューイの教育哲学を再構築するフィッシュマンとマッカーシーによる先行研究を主たる対象として取り上げて検討した。これらに加えて、ナラティヴ的探究を唱えるカナダのクランディニンの研究動向にも着目した。またデューイ自身の哲学・倫理学を、とくに『人間性と行為』に引きつけて再考し、人間が道徳的に生きることの意味を近年の環境プラグマティズムでの議論や希望論でのトピックと関連づけて理解を深めてきた。以上については関連する学会に参加して研究報告をいくつか行うことができた。 いま1つは実践研究を深める足がかりとして、岐阜市近隣や附属の小中学校で行われた道徳授業の研究公表会へ参加し、新しい学習指導要領のもとで展開されている道徳の授業の実際と課題を検討した。あわせて自身が所属する大学で教職科目の一部として担当する道徳教育の指導法の講義のあり方を省察した。これらについても関係する学会に参加し実践報告として深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施する予定であったものはおおむね順調に進められたと考える。海外調査の日程の調整が困難であったけれども、24年度以降に設定し直すこととして、引き替えにそのための準備となる文献研究を中心に十分に遂行できた。そのような近年のアメリカ合衆国の教育哲学や教育理論の動向を検討することを一方で、日本の学校での具体的なカリキュラム開発や指導計画の作成といった実践的な探究を他方で進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定した海外調査を延期した分が24年度に主には旅費として支出される計画である。一方で文献研究や先行研究を中心とした希望の道徳教育の哲学を探究し、他方で日々重ねられる道徳教育の実践を省察することを通じて、希望を主題とする道徳教育を構想するという研究計画全体は大きく変更されるものではない。得られた成果を随時報告する機会を得て研究の推進としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に得られた成果を基にして、本年度での重点的課題を「希望を主題とする道徳教育の活動的実践」と設定し、以下の3点を中心に展開する。 1.文献研究としては、本研究に関連する分野である心理学でのポジティブ心理学、また社会学での希望学やナラティヴ社会学といった新たな動向から、そうしたテーマから構想されるべき道徳教育の原理、またその授業実践の論理立てあたりまでをも射程に入れて取り組む。 2.実践研究については、前年度より継続して小中学校での道徳の授業の分析と実施を含めた事例研究を行う。 3.海外調査として、フィッシュマンらの道徳教育論とその実践の解明のために、10月もしくは11月に10日間の予定で、フィッシュマンが在籍するノースカロライナ大学シャーロット校を訪問しインタビューを試みる。また彼の共同研究者であるマッカーシーの授業実践にも直接参加する。 以上については、秋に開催予定の日本デューイ学会や日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会など、関係する学会において、特に道徳の授業実践の課題と可能性を中心に報告する一方、論文にして投稿する。
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