研究課題/領域番号 |
23730773
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
龍崎 忠 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (80340389)
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キーワード | 道徳教育 / 希望 / デューイ / プラグマティズム / 人間形成 |
研究概要 |
本研究は、希望を主題とする道徳教育論を形成しその実践を省察的に創造する目的で展開されるものである。人間形成における希望を正当に評価し、人としての在り方や生き方に不可欠なものとして位置づけることは、道徳教育が引き取るべき急務の課題である。平成24年度は重点的な課題として「希望を主題とする道徳教育の活動的実践」に取り組み、以下の2点を中心に展開した。 第一に文献研究として、本研究に関連する分野である心理学でのポジティブ心理学、また社会学での希望学やナラティヴ社会学といった新たな動向について検討した。これらの動向から浮かび上がるのは、いかに道徳教育や人間形成の原理を再構築するかという課題であった。プラグマティックな人間観と関連づけてみると、希望を抱くことがよりよい自己をめざし相互に成長することと重なり合うのである。この点については、昨年度から引き続いてとくにデューイの『人間性と行為』に引きつけて再検討を試み、学会にて成果の報告を果たした。 第二には、実践研究を深めるために、昨年度から継続して、岐阜市近隣や附属の小中学校で行われた道徳授業の研究公表会などに参加し、実際の道徳の授業の実際と課題を検討した。あわせて自身が所属する大学で教職科目の一部として担当する道徳教育の指導法の講義のなかで、希望を主題としうる道徳の授業案を提示した。授業実践の論理立てをも射程に入れて本研究を進められたことが成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施される予定であったものはそれなりに順調に進められたと考える。ただ学内外で果たすべき職責や役割が増えたことの影響で、海外調査のための十分な時間の調整が引き続き困難であった。しかし、海外調査は25年度に設定し直すこととして、そのための準備となる文献研究を中心に遂行できた。24年度は道徳教育の周辺領域の動向の再検討と、学校での道徳授業のための具体的なカリキュラム開発や指導計画の作成といった実践的な探究との両者を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では、海外調査と実践的課題とを中心に展開する。また本研究の最終年度でもあり、これまでに得られた成果を随時報告する機会を得て、一連の仕上げを意識したい。一方で引き続き文献研究を中心とした希望の道徳教育の理論を探究し、他方で道徳教育の実践やカリキュラムを再構成することを通じて、希望を主題とする道徳教育を構想するという研究目的を果たしたい。 本年度はこれまでの成果を踏まえて本年度は中心的課題かつ研究の総括として、「希望を主題とする道徳教育論の形成」を意識して展開する。具体的には以下の3点を核とする。 第一には、理論研究の対象をウェストブルックやフレイレなどに据え、希望を民主的な生き方に関連づけ検討する。併せて愛や悲劇といった観点でデューイの教育理論を解明したリストンにインタビューを試み、初夏にコロラドでの海外調査を実施する。 第二には、小中学校での授業研究と実践を行い、効果的な主題の構成のあり方や授業展開・教材の開発、さらには道徳のカリキュラム開発について取り組む。 第三には、希望の道徳教育論の構想を、機会を得て国内の学会にて報告し論文にして投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外調査に使用するための旅費の支出が多くを占めることになる。しかしこれは過年度の積み残しの部分でもあり、全体的な予算計画には影響を与えない。この海外調査や学会での成果報告などのための旅費を中心に、支出を予定している。また前年度までに研究に必要な物品、とくに図書については相応のものを購入できている。
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