研究課題/領域番号 |
23730778
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 仁 福岡大学, 人文学部, 講師 (30432701)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教員養成 / アメリカ / アカウンタビリティ / 付加価値評価 |
研究概要 |
本年度は、各州の教員養成アカウンタビリティ・システムを把握するために、ミシガン州とニューヨーク州を事例にその内実を分析した。ミシガン州の分析については、連邦政府との関係を考察し、論文にまとめた。ミシガン州では、高等教育法の影響により、新たに教員養成アカウンタビリティ・システムを構築しており、アカウンタビリティが強化されていた内実を指摘した。 ニューヨーク州については、特に教員養成機関に対する付加価値評価(value-added assessment)に着目した。具体的な制度の構想を把握するために、ニューヨーク州教育省の関係者へのインタビュー調査を行い、教員評価における付加価値評価の活用の実態を分析した。実態として、連邦政府による競争的資金の獲得という目的があり、連邦政府に合わせた制度を構築せざるを得ない状況が看取できた。また、教員養成機関への活用という観点から、ニューヨーク大学へ訪問し、特にアクレディテーションにおける付加価値評価の活用の実態を調査した。 これらの調査および分析を基に、50州における教員養成アカウンタビリティ・システムの分類を始めた。資料としては、NCTQによる報告書及びアクレディテーション団体との協定書を利用している。また、付加価値評価の活用については、連邦政府が求める重要な施策であることから、すでに試行しているルイジアナ州の教員養成アカウンタビリティ・システムの分析も並行して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、米国の教員養成アカウンタビリティ・システムの重層的構造を解明することにある。本年度は、この目的に対して、まず実態の把握という観点からミシガン州とニューヨーク州のシステムの内実を分析した。ミシガン州については、州教育委員会の議事録分析等を行い、アカウンタビリティ・システム構築の意図を把握した。これにより、各州のシステム構築の目的の方向性を確認できると考える。 また、ニューヨーク州については、現地でのインタビュー調査を行うことで、より実態に迫ることができた。具体的には、連邦政府による競争的補助金政策(Race to the top)の影響が大きいことを把握することができた。 こうした点より、本年度は当初の目的に対して、おおむね順調に研究を遂行することができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の方策として、まず全米50州の傾向を分析することがあげられる。連邦政府との関係および専門職団体の関係から、各州の教員養成アカウンタビリティ・システムの構造を分析する。 この分析作業と並行して、すでに特徴がみられるような州については、現地調査を行うことで、具体的な内実を解明する。現段階では、ルイジアナ州やフロリダ州は、連邦政府の施策に沿う形で改革を進めており、現地での反応や意図を探ることによって、その方向性の議論を深めることができると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費ができた理由として、現地調査をニューヨーク州だけとしたことが挙げられる。次年度以降の本格調査の前の予備調査ということで、ニューヨーク州を選定した結果、そうした繰り越しが生じた。また、50州の制度の分析視点の設定が若干遅れたため、必要となる資料や機器の購入を見送ったことも関係する。 こうした状況を踏まえ、まず繰り越された研究費については、現地調査の充実に充てる。具体的には、次年度はルイジアナ州とフロリダ州を予定しており、旅費にかかる経費が増えると想定される。また、50州の分析結果やルイジアナ州の分析といった本年度の後半からの研究成果の発表が可能となるため、研究成果発表のための国内旅費にも繰り越し分を充てる。 次年度の研究費については、上述した現地調査旅費及び国内旅費のほかに、関連文献・資料の購入、資料整理に必要な電子機器(プリンターやスキャナー等)といった物品費にも利用する。
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