本研究は、幼稚園の成立と展開の過程を、母親の役割や位置づけを主たる視点に置き、我が国と中国の状況と比較することを通じて、我が国の幼稚園制度の特徴を考察することを目的とした。研究の結果、両国ともに、幼稚園教育が海外から移入された当初、幼児の教育は家庭の母親においてなされるべきものとして幼稚園不要論が存在した。しかし、幼稚園教育の意義が認識されるにしたがって母親の教養の低さが問題となり、家庭で母親が幼児を教育するよりも幼稚園で教育することが教育上相応しいとの意見がみられた。本研究を通じて、幼稚園の成立および展開において母親の教育的役割がしだいに変化していく過程の一端を明らかにした。
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