保育者の保護者に対する意識を明らかにするために、保育士655名、保護者2855名を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、全体的には保育士と保護者が互いに肯定的な印象を抱いていたが、保育士から保護者よりも保護者から保育士の方がより肯定的に捉えていた。肯定的な印象につながる特徴として、保護者の8割以上が選択した項目は「笑顔が多い」「子どもとの関わりが上手」「あいさつをする」であったが、8割以上の保育士が選択した項目はなかった。 次に、保育士の経験年数別に保護者に対する印象を分析した結果、1年未満と21年以上の保育士において、保護者に対する印象が明確化されている可能性が示された。1年未満では、肯定的な印象が強く、21年以上では肯定的な印象と否定的な印象が混在していた。一方、経験年数が5~20年の保育士では、印象等にばらつきが多くみられ、明確な印象が示されなかった。否定的な印象につながる特徴を、経験年数が10年以上の保育士と10年未満の保育士で比較をすると、「外見が地味」「子どもとの関わりが下手」「子どもに関心がない」などでは、経験年数が10年未満の保育士の方が多く選択していた。一方、「学歴が高い」「自分より年上」「要求・苦情が多い」などでは、経験年数が10年以上の保育士の方が多く選択していた。このように、保育士の経験年数によって保護者に対する意識が変化することが把握できた。 そこで、保育者の保護者に対する意識の変容過程を明らかにするために、保育士の経験年数が5年以上の保育士30名を対象としたインタビュー調査を実施した。その結果、保育の経験と共に、保育士自身の結婚や出産、子育ての経験が保護者に対する意識に影響を及ぼす大きな要因となることが示唆された。 これらの結果は、保育者が保護者を支援する際の有益な資料となると考える。
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