研究課題/領域番号 |
23730784
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研究機関 | 鳥取短期大学 |
研究代表者 |
白石 崇人 鳥取短期大学, その他部局等, 助教 (00512568)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 大日本教育会 / 帝国教育会 / 教員改良 / 教育学 / 日本史 / 教師論 / 日本教育史 / 日本教員史 |
研究概要 |
平成23年度においては、以下のような研究を行った。 まず、開始期・模索期(1883年~1893年)大日本教育会の教員改良運動について、『大日本教育会雑誌』にみられる教師論を整理・検討し、同時期の理想的教員像を分析した。とくに1889年~1892年の同誌の記事一覧を作成し、教師論を主とする記事の抽出を行った。その成果は、中国四国教育学会第63回大会で発表するとともに、「明治20年代前半の大日本教育会における教師論―「教育者」としての共同意識の形成と教職意義の拡大・深化」(中国四国教育学会編『教育学研究紀要(CD-ROM版)』第56巻、2011年、233~238頁)と題して活字化した。後者の論文については、とくに拙稿の「明治10年代後半の大日本教育会における教師論」(2008年刊)と「明治20年代初頭の大日本教育会における教師論」(2010年刊)とをふまえてまとめたものであり、1883年~1891年までの大日本教育会の教師論の展開過程を明らかにした。 前身団体期(1879年~1882年)の教員改良運動については、『東京教育会雑誌』『東京教育協会雑誌』『東京教育学会雑誌』の記事見出し一覧を作成し、教員に関する記述を抽出した。この研究により、この時期の教育会における教師論の転回にかかわる最大の契機が、明治13年夏の東京府会の教育費議事・削除決議であったことを突き止めた。そのため、東京都立公文書館で史料調査を行い、この前身団体が問題視した明治13年中の東京府会議事録を手に入れ、分析することができた。この議事録と関連させた教師論研究については、平成24年度中の学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、明治期の大日本教育会・帝国教育会の教員改良運動について、その実態を把握するとともに、実態の背景およびそこに至る経緯を実証的に解明することである。本年度は、その方法の一つとして、運動目標の原型としての機関誌における理想的教員像の検討を行った。 本年度では、本研究に先行して行っていた研究(拙稿「明治10年代後半の大日本教育会における教師像」(2008年)、拙稿「明治20年代初頭の大日本教育会における教師論」(2010年))をふまえて、1883年から1891年までの機関誌『大日本教育会雑誌』における教師論を研究し、研究対象期間の理想的教員像について具体的に検討できた。また、学会発表・活字化することができた。1891年・92年分の研究は活字化することはできなかったが、すでに記事一覧の作成は完了しており、平成24年度における学会発表の準備を進めているところである。 前身団体における教師論の研究では、本年度における研究中に想定外の重要な発見があったため、学会発表までに至らなかった。しかし、必要な史料整理・分析は完了しており、学会発表の目処も立っている。今後の研究次第で十分挽回できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降の研究は、次のように進める。 平成24年度には、まず平成23年度に完遂できなかった前身団体における教師論の研究を仕上げる。この研究についてはほぼ分析が完了しているため、予定の研究計画に大きな影響は与えないと考える。次に、当初の予定通り、模索期(1892~93)・確立期(1894~1900年)の大日本教育会・帝国教育会機関誌における教師論の分析、教育功績者顕彰事業における顕彰対象者の分析、研究調査組織「委員会」に対する教員の動向・役割の分析を進める。研究成果については、中国四国教育学会等の大会・機関誌、および所属機関の研究紀要で発表する。 平成25年度には、予定通り、確立期・展開期(1901年~)の大日本教育会・帝国教育会機関誌における教師論の分析、顕彰対象者の分析、夏期講習会等における内容とその背景の分析を進める。研究成果については、各種学会・所属機関の紀要等で発表する。 平成26年度にも、予定通り、展開期の帝国教育会機関誌における教師論の分析、研究調査組織「委員会」「調査・改良・研究部」に対する教員の動向・役割の分析、帝国教育会中等教員養成所の分析を行う。研究成果については、各種学会・所属機関の紀要等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度研究費に繰り越し分が残ったのは、必要物品の購入額が予定よりも安くなったためである。繰り越し分は、物品費を補うように使用する。とくに、確立期・展開期の教師論研究の主要な史料となる、帝国教育会機関誌『教育公報』の復刻版(大空社、定価165,000円)の購入に充てたいと考えている。 そのほか、旅費については研究成果発表のための各種学会参加旅費、および史料調査・収集のための旅費として使用する。その他の費用は、史資料のコピー代・製本代、学会費などに使用する。
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