平成26年度は、明治後期における大日本教育会・帝国教育会の教員改良運動について、教員動員構想・教員講習事業について研究を進めた。 その研究成果は、「明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良―資質向上への指導的教員の動員」(教育情報回路研究会、立教大学、2014年7月21日)、「明治期大日本教育会・帝国教育会における教育勅語解釈―指導的教員・教育行政官の動員構想」(教育史学会第58回大会、日本大学、2014年10月5日)、および「明治期帝国教育会における教員講習の展開―中等教員程度の学力向上機会の小学校教員に対する提供」(中国四国教育学会第66回大会、広島大学、2014年11月15日)の形で公表した。また、中国四国教育学会での発表は、「明治期帝国教育会における教員講習の展開―中等教員程度の学力向上機会の小学校教員に対する提供」(中国四国教育学会編『教育学研究紀要(CD-ROM版)』第60巻、2014年、37~42頁)の形で活字化した。 その結果、次のようなことが明らかになった。両教育会の教員改良は、資質能力向上の機会を提供することで国家隆盛のための教育擁護・推進に全国各地の指導的教員を動員したが、その取り組みは明治後期に一応の完成を見た。明治39年から隔年開催された全国小学校教員会議は、その集大成であった。その目指す「国家隆盛」の意味は、教育勅語の衍義書である『聖諭略解』(明治27年)と『訂正増補聖諭略解』(明治35年)に端的に示されており、天皇制国家の実現・隆盛にあった。帝国教育会は、明治32年以降も毎年欠かさず、教員補充というよりも小学校教員の学力向上・新知識獲得を目指す教員講習事業を展開した。その講習は、女性教員や准教員も受講した。 機関誌の理想的教員像や研究組織、中等教員養成所の研究は、前年度までに完了したため省略した。
|