平成25年度は地域言語学校の事例調査として、アルザス語学校4数のフィールドワークを行った。移民言語学校の事例調査としては、トルコ人主導で建設された学校、ムスリム諸協会、他移民文化協会(ヴェトナム、ポーランド、アッシリア、中国)への調査を行った。そして前二年の研究実績を交えつつ、複数の口頭発表および論文執筆につなげた。 研究期間全体では計6校のアルメニア学校、20件の地域語学校および各統括本部(内訳はブレイス語学校(ディワン)6件、バスク語学校(イカシトラ)4件、カタルーニャ語学校(ブレッソーラ)4件、アルザス語学校(ABCM)5件、オック語協会1件)、7件の移民文化協会および学校において調査研究を行った。 本研究の主な研究目的は、当該3年間の調査にもとづき、地域言語学校および在仏アルメニア学校を中心とする移民言語学校を比較し、運営に関する共通点、相違点を比較し、各学校の特徴と問題点を抽出することであった。その上でコミュノタリスムを想起させるバイリンガル学校とそれを忌避しようとする社会の関係、特に国民教育省や地域行政との関係を検討分析した。 その結果、学校運営に関してこれらの学校は、早期教育という方法で言語保存・維持を目的としている学校というだけではなく、治安がよく、教育水準の高い一般の私立学校としての役割も地域社会から求められており、学校側もそれに対して尽力していることを確認した。地域行政との関係においては、アルメニア学校と地域言語学校は特に敷地や建物の面で地域行政と密な連携が取られている一方、他の移民の学校では、地域行政との連携はあまりなく、場合によっては忌避される事例も確認できた また、スペインの地域言語でもあるバスク語、カタルーニャ語、ドイツの地域言語でもあるアルザス語はスペイン、ドイツ内の該当州政府から資金調達を受けたり、教師の越境リクルートが存在するという特徴がみられた。
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