本研究は、日本の大学インターンシップの多様な展開に対する分析的理解を試みてきた研究代表者のこれまでの研究成果を発展させ、インターンシップ実施校や担当教職員など関係アクターの特性に着目することで、日本の大学インターンシップにおける「多様性」の理論的整理を行うことを目的として推進された。 平成23年度は、正課教育としてのインターンシップにかかわる大学組織に焦点を当て、インターンシップが教育課程に位置づけられるうえでの「正統性」を類型論的に考察することを通じて、教育課程と厚生補導の関係性や、それらを担う組織間の有機的連携の実態を明らかにしようとした。こうした研究活動の結果、日本の大学インターンシップにおける「多様性」の理論的整理の鍵は、インターンシップにかかわる<教員組織>および<厚生補導組織>の実態と関係性の解明にあるという理解を得た。 平成24年度は、上記の研究成果をふまえ、教育課程と厚生補導の結びつきが強いかたちでインターンシップが推進されている事例の分析と考察を進めるなど、さらにインテンシブな事例調査と文献調査を展開した。また、インターンシップやそれ以外のキャリア教育において、近年、企業やNPO法人等の学外アクターの関与の強まりが多くの大学で進行していることも、注目すべき点として研究を進めた。その結果、<教員組織>と<厚生補導組織>のさらに外縁にある学外アクターが、従来もみられた現場実践の担い手の供給源という位置づけから、「大学教育改革」等の文脈において教育課程のあり方そのものに対して発言し影響力を及ぼす立場へと質的に変容しつつあることを確認した。この、学外アクターが教育課程に対してどのような関係にあるのかという点こそが、<教員組織>と<厚生補導組織>の関係性を規定し、多様なインターンシップの理論的整理の新たな基軸となるという知見に至った。
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