研究課題/領域番号 |
23730796
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
川口 俊明 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (20551782)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教育社会学 / 教育と不平等 / 初等教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、次の二つである。一つは、保護者の経済的・文化的階層の違いによって、子どもたちのあいだに、どのような不平等が生じるのかを明らかにすることである。もう一つは、こうした教育の不平等を是正するために、学校教育に何ができるのかを探ることである。ここでは、おもに日本の小学校教育を念頭に置いている。具体的には、九州の大都市であるA市の小学5年生を調査対象とし、校区の立地条件が異なる複数の小学校において、(1)参与観察調査・インタビュー調査と、(2)児童・保護者・教員への質問紙調査を実施する。参与観察調査・インタビュー調査という質的調査法を用いて各学校現場の実態を描くと同時に、質問紙調査を用いてA市の教育と不平等の全体像を明らかにし、日本の「教育と不平等」を多角的に解明しようとする点に、本調査の意義がある。23年度は、A市の3つの小学校(恵まれた地域に立地する学校・ややきびしい地域に立地する学校・非常にきびしい地域に立地する学校)を対象に、参与観察調査・教職員へのインタビュー調査を実施した。調査は調査協力者の協力を得て2人で行い、だいたい週に1回程度の割合で各学校を訪問し、5年生の教室で半日から1日程度の参与観察調査を行った。また、長期休暇の際には、各学校の管理職・教員へのインタビューを行い、各学校の運営方針・指導方針などについて聞き取りをしている。また、23年度の9月には、ここまでの調査経過をまとめ、日本教育学会での発表・論文投稿を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、(1)複数の小学校での参与観察調査・インタビュー調査と、(2)A市の小学校を対象にした児童・保護者・教員への質問紙調査を実施する予定であった。しかし、23年度当初に、調査対象とするA市の人事異動に伴い、調査計画を大幅に変更する必要が生じたため、(2)の児童・保護者を対象とした質問紙調査の実施が遅れている。この点については、現在、関係各校と調整を行なっており、24年度にあらためて質問紙調査が実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、23年度に引き続き、A市の小学校の6年生を調査対象とする。なお、研究の進捗に伴い、23年度まで対象にしていた3つの小学校では、十分に調査目的を達成することができないことが判明した。このため24年度は、これまでの3つの小学校に加えて、さらに1つ小学校(やや恵まれた校区に立地した学校)を調査対象に加えることにした。この学校への調査協力依頼はすでに行なっており、24年度の6月から参与観察調査・インタビュー調査を実施する予定である。また、24年度の9月には、ここまでの参与観察・インタビュー調査の結果を踏まえ、児童・保護者を対象にした質問紙調査を実施する。質問紙調査で得られたデータをもとに、各学校で実施される学力テスト・体力テストの結果とも併せて分析を行い、A市の教育と不平等の実態解明をめざす。調査の結果については、8月・9月に開催される日本教育社会学会・日本教育学会などで報告する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、次の3点にわけられる。(1)A市の小学校を対象とした質問紙調査の実施にかかわる費用、(2)A市の4つの小学校での参与観察・インタビュー調査の実施にかかわる費用、(3)研究結果を報告するための旅費。(1)については、23年度に実施する予定だった調査が、調査対象となるA市の人事異動の影響もあって実施できていないため、その経費を23年度の研究費から24年度の研究費に繰り越して実施する予定である。(2)については、当初3つの小学校で行う予定であった参与観察調査を、24年度から4つの小学校に拡大する予定である。この調査対象の拡大に伴う経費については、(1)の質問紙調査の規模を多少縮小する等して対応したい。(3)については、今年度は、日本教育社会学会・日本教育学会などで報告を行う予定である。これらの学会への出張旅費を計上する。
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