研究課題/領域番号 |
23730799
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研究機関 | 聖カタリナ大学 |
研究代表者 |
長尾 由希子 聖カタリナ大学, その他部局等, 講師 (00570821)
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キーワード | 専攻 / 職業教育志向 / 複線型専門職 / ジェンダー / 進路 / 専門学校 / 「手に職」志向 |
研究概要 |
申請者は教養知・職業知をキーワードに性別を始めとする進学者の属性と専攻単位での進路形成(四大・専門学校・短大)の規定要因について分析を進めてきた。しかし申請時にも指摘した通り、問題の重要性に比して、圧倒的なデータ不足が課題であった。専門学校進学者を把握可能かつ性別・専攻別で安定的な定量的分析に耐え得る公開データは限られ、新規公開データの申請を行い変数作成とデータ整備を進めたが、サンプル数は依然として十分であるとは言えなかった。 また、研究および分析を進める過程で、概念を再検討する必要性を感じてきた。申請者は教養知・職業知という米国の先行研究に基づいた概念で専門学校を主軸とした進学者層における職業教育志向の拡大に関してこれまでに複数の分析・発表を行ってきた(今年度分は研究発表の項参照)。この概念は経験的に理解しやすく一般的な聴衆の反応は好感触であり、研究発表の項に示す通りパネリストの依頼もあったが、他方で学術的な厳密性や米国以外の職業教育志向や欧州の非大学型高等教育機関の発展等との比較を視野に入れると別の展開も一考であると思われた。 以上を踏まえて主に年度後半より計画を修正し、「複線型専門職」に焦点化するとともに、量的データを補足するため、新たにインタビュー調査を実施した。「複線型専門職」とは前年度に申請者が査読付研究ノート・発表にて提起した概念であり、複数の学校種で養成される国家資格の専門職を指す。同概念を援用すると、特定の専門職市場の拡大と高等教育市場で起きた職業教育志向およびそれを支えた女性進学者層の動向を併せて考察することができる。ただし、理論枠組が明確になる一方でサンプルの量的確保はより難しくなるため、女性を主対象としたインタビュー調査を行った。その成果の主な部分は博士論文としてまとめ(現在審査中)、また、引き続き国内外への雑誌投稿、学会発表等を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項で述べたように、データ・サンプルの確保の点で課題があり、また、主に依拠する概念において当初予定していた研究計画から変更があった。そのため、分析上の作業や新たなインタビュー調査の実施など、研究過程において修正を行った。しかしながら、大枠で検証する内容に変化はないと言える。また、インタビュー調査に関しても、当初予定していた計画とは異なる観点から女性自身の進学・就職への意識を明らかにすることができ、研究を別の角度から深化するものであったと言える。なお、インタビュー調査によって生じた謝礼・テープ起こし等にかかる諸費用は申請時の計画には含まれていなかったため、不足分は自費にて補った。 以上のように、研究計画には変更があったが、おおむね順調に進展していると言える。ただし、一部変数の検討が遅れた他、研究成果全体の公表という点では、博士論文執筆を優先していたため、査読論文への投稿は遅れており、今後の課題であると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き先行研究の精査と国際比較の枠組を意識しながら、分析の精緻化を進め、学会発表・学会誌投稿などをペースメーカーとしながら研究成果の発表を行う。また、研究計画や研究作業等に変更が生じた場合にも、柔軟かつ迅速に対応できるように、適宜計画や実施状況の確認、作業課題の見直しおよび代案の検討等を行いながら取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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