本研究の目的は、1990年代から今日に至る台湾の教育改革を「多様化の定着」という観点から批判的に省察することにある。主要な論点は、(1)ナショナル・カリキュラムと教科書をめぐる論争(中国アイデンティティの一元性と台湾アイデンティティ主義の多元性の相克)、(2)エスニック・マイノリティ(原住民族)教育の可能性と限界、(3)少子化時代における大学間の差異化をめぐる競争であった。民主化後の台湾の教育は、総じて一元性から多元性に向かって動いているが、多様化という多面的な過程を仔細に観察すると、それは時に定着の困難に直面していることが明らかになった。
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