研究課題/領域番号 |
23730805
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大森 愛 立教大学, ランゲージセンター, 教育講師 (20440258)
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キーワード | 英語教育 / 小学校 / 自治体間 / 言語政策 / 計量分析 / 格差 |
研究概要 |
本研究の目的は、小学校で実施されている英語活動の実施について、自治体間格差の実態を明らかにしようとするものである。すでに、平成23年度より高学年で英語活動が完全実施となっている。5・6年生で週1回の授業が導入され、希望する小学校には文部科学省が作成した「英語ノート」(平成24年度より「Hi, Friends!」)を配布している。しかし、これらの状況以外に国家からの財源的保障や統一した支援はない。たとえば小学校6年間で児童が受ける英語活動の合計授業時間数、ALTの採用、教員研修などの状況は各自治体や学校に任されており、実施状況に大きなばらつきがある。特に十分な経済的な支援がない状況下での必修化は、結果的に教育の質の面で自治体間格差を拡大させるのではないか。本研究はその仮説を検証することを目的としている。 本年度では、昨年度実施し回収したアンケート調査と自治体に関する既存のデータを統合させ、統計的に分析可能なデータセットを作成した。このことにより、はじめて自治体を単位とした実施状況の把握と各自治体の経済的、政治的、社会的要因との関連を検討することが可能となる。この点が本調査の意義である。 さらに、本年度は学会発表を行った。海外(カナダ)での発表では、外国語としての英語に限らず母国語を含めた言語政策に関してまったく異なる文脈を持つ国々の研究者たちと意見交換をし、様々な議論を聞くことができた。また、日本の初等教育における英語活動・教育について発信できたことは大変有意義であった。国内の学会においては、小学校英語必修化前後の実施状況を自治体の財政力に着目して比較検討した内容と結果を発表した。いただいた貴重なご質問やご意見から今後のより幅広い分析につなげていく所存である。小学校英語必修化前後の実施状況の変化を把握・検討することは、今後の小学校英語活動の充実・改善のために重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。当初の計画としては、アンケート調査回収後、アンケートで得られたデータと市区町村に関する既存のデータを整理し、一つのまとまったデータセットの作成・完成することだった。データセットの作成依頼をした業者やほかの研究者からの助言のお蔭もあり、無事予定通りデータセットを完成させることができた。 その後、計量分析にも取り掛かり、秋には国内と国外の学会で当初の予定通り発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、まずは引き続き計量分析を行うことである。きちんとした分析を実施し、論文を投稿することを目標とする。現時点での課題を挙げるとすれば、今回の研究費で実施して得られたデータとは別に以前実施したデータを用いて、2時点におけるデータの分析結果を比較検討することを計画していた。しかし、過去のデータセットの中にいくつか訂正箇所があると思われるため、その確認に多少時間を要する点である。ただし、確認可能であるため、丁寧に作業を行っていく。 最後に、アンケートの自由記述欄に記載していただいた回答も今後有意義に活用できる視点や方策を検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度から平成25年度にかけて繰越金が生じた。その主な理由として以下が挙げられる。アメリカで開催された国際学会に参加したが、平成25年3月に開催されたため、その経費の処理が平成25年度分の扱いになったことである。そのため、平成25年度への繰越金となっているが、現状はすでに使用済みである。 平成25年度の研究費の使用計画としては、よりスピードアップと精査な計量分析を行うために必要な機材やソフトの購入が必要である。さらに、国際学会にも参加したいと考えている。
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