本研究の目的は、小学校で実施されている英語活動について自治体間格差を明らかにしようとするものである。平成23年度以前は、小学校英語活動の導入やその実施内容が各自治体や小学校の判断に委ねられていたが、活動内容や授業時間数に相当のばらつきが生じ、問題視されるようになった。そのような状況を受け、平成23年度より高学年を対象に週1回の英語活動が必修化された。 この政策的措置により、教育機会の面では一定の均等が確保されたと言えよう。その一方で、英語活動の内容や指導方法など質の面において未だ国からの統一した支援はない。そこで本年度は全国の自治体が実施した教員研修に着目し、その実態と実施有無の規定要因分析を行ってきた。結果は、アンケート調査を実施した平成23年度に小学校英語を対象とした教員研修を実施した自治体は半数を少し超えた56.4%だった。実施有無の規定要因分析では、自治体の規模や小学校英語に対する取り組み方(何らかの小学校英語の統一カリキュラムが整備されている、指導主事が配置されている、学級担任が主な指導者である、など)が統計的に影響していることが確認された。また、より詳細な分析が必要と思われるが、地域間格差も確認された。小学校英語実施の充実と成功には教員研修が鍵を握ると考えるため、その実態と自治体間格差を把握することは重要かつ必要不可欠である。 今年度は国際学会にて複数の発表を行った。日本の小学校英語活動の実施状況、教員研修の取組みや課題について日本国外に発信することができた。諸外国で英語教育と教員研修に取り組んでいる研究者たちとの意見・情報交換ができた。今後は計量分析を続けるとともに、計量分析では把握することのできない自治体の特徴によって異なる困難・課題を、インタビュー調査など質的調査を通して把握していくことが必要と考える。
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