研究課題「台湾の中学校英語授業における教材の実態調査」は、日本と同じような言語学習環境にあると考えられる台湾の中学生が、日本の中学生よりもなぜ高い英語力を有するのかという疑問に答えるために、中学校の英語指導環境、またそれをベースにした英語授業、およびその英語授業の中でどのような教材がどのように使用されているかの実態を調査することを目的としたものである。 本研究の研究対象は、卒業生の進学実績の点から判断して、またカリキュラムや指導法の面で先進的な取り組みを行っていると考えられる台中地域の私立中学校とした。具体的には、この学校では現在の日本で注目を集めている内容言語統合型学習(CLIL)という指導法の要素を取り入れた授業を展開している。 本研究では、この学校のカリキュラム及び教材等に焦点をあててついて調査した。調査結果から、日本の公立中学校の英語授業とは、(1) 目標、(2) クラスサイズ、(3) 4技能の指導のウエイト、(4) 授業において英語に触れる機会、(5) 英語担当教員の英語力、(6) 教科書の分量及びその使い方、の6点に関して、大きく異なる、またはその可能性が高いことが示された。 今回調査対象としたのは私立のいわゆるエリート校であり、日本の標準的な公立中学校との単純な比較はできない。しかし、日本の英語教育がグローバル化に対応していくためには、上記の点で改善の必要があることを、今回の調査によってある程度明らかにすることができた。今後、この学校で取り入れている内容中心教授法や使用教材に関する生徒の意識調査等を行い、授業における教材の効果的な活用についてさらに考察を深めていきたい。
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