研究概要 |
話し合いを、文字言語を使ってフォローするものを「視覚情報化ツール」と呼ぶ。本研究はこの視覚情報化ツールを用いた話し合い指導の小中学校での実践化を目ざすものである。本年度は、歴史的な視点からの調査および実証的な調査・分析をおこなった。 (1)戦後の学校教育における話し合い指導を歴史的に概観するなかで、視覚情報化ツールの実践をそこに位置づけ、今後に向けた課題を明らかにした。制度面・実践面における戦後の話し合い指導の動向について主要なものを概観した結果、話し合い指導は様々な工夫や実践が積み重ねられてきたが中でも、近年ファシリテーション・グラフィックなどで注目されている視覚情報化ツールは、昭和20年代からわずかではあるがその萌芽がみられていた。平成以降においても、日本独自の視覚情報化の試みもさまざまな形で存在していたのである。だが、それらが十分に継承され発展させられてきたわけではなかったことを明らかにした。(長田2013) (2)大学生における視覚情報化ツールの活用実態や、ツールのデザインによる効果についてはすでに考察されてきた(長田2007,長田2009c,長田2010,長田2011b,長田2012b)。そこで、話し合いメモの取り方とその報告の仕方は、学年ごとにどう変容していくのかを調査した。テキストマイニングによる分析の結果、学年が進むにつれてメモと報告書の記述量は増え、その内容も複雑化・高度化していくことが明らかになった。(長田2013) (3)小5と中2について、記号的道具であるメモの取り方によって報告書の記述量や内容に差異がみられるかを調査した。その結果、話し合いメモを図示化するだけで、小5では「論点」、中2では「意見間の関係」、大学生では「意見間の関係」と「論題」の把握がなされやすくなることを明らかにした。(長田2013)
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