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2011 年度 実施状況報告書

戦時体制下の日本における工作科の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23730819
研究機関筑波大学

研究代表者

和田 学  筑波大学, 芸術系, 助教 (30582887)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード国民学校芸能科 / 教育審議会 / 芸能科手工 / 芸能科作業 / 芸能科工作 / 陸軍省 / 模型教育研究会 / 機械化国防協会
研究概要

○研究の具体的内容/平成23年度は、当初の目的に沿い、昭和14年の教育審議会による国民学校案の審議の中で、芸能科と芸能科作業があらわれる経緯を中心に調査・考察した。先ず、教育審議会の速記記録を基にし、会議が進展してゆく中で、芸能科が出現するまでの経緯、及び、芸能科作業の一部として手工が科目内に取り込まれてゆく経緯を明らかにした。また、当時の図画手工教育の関係者達による、教育審議会案の芸能科作業への反対運動の具体的な経過と背景を明らかにした。次に、文部省内において国民学校制度が確立する直前、芸能科作業が芸能科工作へと変更する時代背景として、文部省内の模型教育研究会と、陸軍人が幹部を務める機械化国防協会の二つの団体が、模型航空機作りを中心とした工作教育を奨励していた点を明らかにした。○研究の意義/国民学校制度の成立過程について教育審議会記録を基に分析した研究は多いが、芸術教育の教科である芸能科の成立過程に焦点をあてた研究は今まで見当たらなかった。それを明らかにした点は意義深いといえる。また、図画手工教育の研究者達により作業を工作の名称へと変更するよう運動が起こされていた点、模型工作の教育を奨励していた文部省と陸軍省の関係団体の存在を明らかにした点も意義深いといえる。○重要性/日本では、戦後以降、図画工作の2領域をもって美術教育の主軸とするという基本方針が戦時中に確立しており、本研究により、この発端・経緯・時代背景を調査・分析・考察できた。更に、工作教育が重視されるようになった時代背景として、文部省・陸軍省の関連団体が模型工作教育を推進・擁護していたことを明らかにした。以上の研究結果に見られるように、日本の学校教育において工作があらわれた背景として、戦時体制下における軍部と学校教育団体との関係が明らかとなったという点において、本研究は重要性が高いと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度は、当初の目的に沿い、昭和14年の教育審議会における国民学校案の芸能科作業と手工の審議経過の考察、及び、その案に反対する図画手工関係者達の動向を明らかにした。この結果は美術科教育学会の学会誌『美術教育学』(第33号、2012年発行、査読付き)の中に、和田学「教育審議会議における国民学校芸能科作業の成立過程とその意見書における図画工作案の出現について」として発表した。 それに加え、昭和15年に芸能科工作が出現する時代背景として、模型航空機作りを中心とした模型工作教育を奨励する二つの団体、文部省の模型工作教育の研究団体、及び陸軍省と文部省により共同支援された機械化国防協会の実態について解明した。更にこの2団体の教材開発や教員講習会などに積極的に協力した東京文理科大学・東京高等師範学校に母体を置く日本手工研究会の活動についても明らかにした。この研究結果は、筑波大学芸術系が発行する『芸術研究報』(第32号、2012年発行、査読付き)に、和田学「戦時体制下の日本における模型工作教育の出現」として発表した。 以上の平成23年度の研究結果から、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、昭和14年以降、教育審議会により決定した国民学校案における芸能科作業が、文部省内の中で、どのように芸能科工作へと改変させられたのか、その経緯を調査・考察する。その方策として、文部省に関係する資料だけでなく、広く戦時中の教育・陸軍関係の雑誌を中心に考察を進めることで、その詳しい実態を明らかにする。その資料を基に、文部省内の官僚の動向などを調査し、省内における芸能科作業・芸能科工作を推進していた人物について調査・分析する。 また、初等教育の芸能科工作の出現に先駆け、教育審議会内の中等教育改革における審議の中で、中等教育課程において芸能科作業が芸能科工作へと変更しており、この背景も初等教育課程において芸能科工作が出現するうえで影響を及ぼした可能性が高いと考えられることから、会議記録を基に経緯と背景を分析する。次に、昭和15年の国民学校制度の成立直前の時期、その案へ反対する図画手工関係者達の反対運動とそれに協力した政治家・官僚・陸軍関係者の実態について明らかにする。この調査は、教育、及び図画手工関係の機関誌を通じて調査・分析を進めてゆく。 次に、昭和15年、最初に芸能科図画工作を研究する施設として東京に設置された、図画工作研究所の設立の経緯や実態を調査する。この研究所は、文部省と学校美術協会という団体により共同運営され、芸能科の改革運動の先導者となった後藤福次郎という人物により設立されている。彼は数年後、大政翼賛会の科学技術委員会の委員となり、図画工作教育を芸能科において振興するよう説得していることから、彼の素性とその研究所の実態を明らかにすることは、芸能科改革運動の全貌を知るうえで極めて重要と考えられる。この調査も、教育、及び図画手工関係の機関誌を通じて調査・分析を進めてゆく。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、従来の計画通り、研究費の50万円を、物品費30万・旅費20万として用いる。 本研究において必要とする文部省・陸軍省・工作教育の関連者の動向を記した資料は、インターネットの古書店通販サイトを通じ購入できるものもあるが、実際に研究施設・図書館に訪問し、新聞・雑誌のバックナンバーを全て調査・分析しなければならないものもある。旅費の20万円は、その文献の閲覧・複写のため他大学の図書館及び研究施設へ訪れる際の交通費・宿泊費に用いる。物品費の30万円は、文部省・陸軍省・工作教育の関係者に関する文献資料の購入、及び資料の複写代金に用いる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 戦時体制下の日本における模型工作教育の出現2012

    • 著者名/発表者名
      和田学
    • 雑誌名

      芸術研究報

      巻: No.32 ページ: 83-93

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 教育審議会議における国民学校芸能科作業の成立過程と その意見書における図画工作案の出現について2012

    • 著者名/発表者名
      和田学
    • 雑誌名

      美術教育学

      巻: 33 ページ: 449~465頁

    • 査読あり

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公開日: 2013-07-10  

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