研究課題/領域番号 |
23730820
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
小林 将太 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (50591468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コールバーグ / ジャスト・コミュニティ / 授業 / 認知発達的アプローチ / 道徳教育 / フェントン |
研究概要 |
平成23年度は、第一に研究実施計画に記載の通り、1970年代から1980年代にかけてコールバーグのジャスト・コミュニティが実践された学校のひとつである、米国ボストンにあるBrookline High Schoolおよびそのオルタナティヴ・スクールであるSchool-Within-a-Schoolを訪問し、授業等の実践を見学するとともに資・史料の収集を行った。現在、同校は明確にジャスト・コミュニティ実践を展開しているわけではないが、実践形態は当時と基本的に変わらないため、ジャスト・コミュニティにおける民主的学校運営の全体像、およびそこにおける授業の意義を考察する上で、今回の学校訪問は貴重な経験となった。また、現在行われている授業のシラバスを入手すること、および本研究課題に関連する事項について教師にインタビューを行うこともできた。 第二に、ジャスト・コミュニティ実践当時の授業のあり方に迫るため、1970年代におけるフェントン(E. Fenton)による研究の分析を進めた。フェントンは1960年代米国においてNew Social Studiesを推進した旗手の一人であるが、彼はその後コールバーグに接近して、認知発達的アプローチに基づく社会科、特に歴史の授業を構想していく。平成23年度は、フェントンの理論を反映したいわゆる「ホルト社会科」の基本構想を先行研究の検討を通して把握するとともに、これに基づき彼の認知発達的アプローチに基づく歴史教育の方法論を解明する作業を進めた。この作業を行うことで、研究実施計画に記載した、同じく進行中である自我発達的観点に立った米国史テキストの分析もより深めることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進行とともに、ジャスト・コミュニティ実践校に学校運営や授業に関する詳細な記録が残されていないことが明らかとなった。これにより、研究の目的に表していた、授業と学校運営との時系列的照合ができなくなったことは、その達成において自ずと限界が与えられることになってしまった。 一方、教師へのインタビューの内容は、申請者が仮説として抱いていた内容を根拠づけるものであったと捉えている。これとフェントンによる方法論の探究とを組み合わせて分析することで、自我発達の観点からみて授業が実践全体のなかにどのように位置づけられるのかを、部分的にではあるが解明することができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、ICレコーダーで記録した教師へのインタビューを文字に起こし、正確な分析を行う。第二に、フェントンの研究過程の考察を進め、彼の方法論の自我発達的意義を明らかにする。第三に、第二の作業に基づき米国史テキストの分析を進め、同様にその道徳教育的機能を解明する。第四に、以上の作業を総合して改めて考察することで、コールバーグのジャスト・コミュニティにおける授業実践の役割、ならびにこれが日本の道徳教育に対して与える示唆を明らかにする。 なお、研究実施計画に記載していた、平成24年度中の学校訪問は、本研究課題の達成に必要な資料を十分に収集できたと判断し、行わない予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、記録した教師へのインタビューの文字起こしにかかる費用、研究発表等にかかる旅費、および研究資料の購入や文献複写の代金にあてる予定である。
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