研究課題/領域番号 |
23730822
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
宮崎 沙織 群馬大学, 教育学部, 講師 (90591470)
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キーワード | 国際情報交換 / 環境教育 / 社会科教育 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
本研究は、アメリカ・カナダで展開されている「環境リテラシー(Evironmental Literacy)」育成の理論と方法を参考にしながら、日本型環境リテラシー学習を構築することを目的としている。その目的を達成するため、平成24年度は、まずアメリカ合衆国における現地調査で、昨年度明確となったヒューマン・エコロジーの考えを基盤とした五つの視点(「システムとしての環境」「社会的な価値と原理の環境への影響」「市民の権利と環境」「環境に関する行動効果の検証」「環境に対する個人・市民の責任んも受け入れ」)をより授業実践レベルで検討し、さらには、アメリカにおける環境リテラシー学習実践と日本における環境リテラシー学習実践の相違点とその要因を探った。次に日本国内の研究活動として、日本の学校教育・社会科教育の文脈に適するように授業を開発した。そして、授業計画を詳細に分析・検討することで、日本型環境リテラシー学習の可能性を提示した。 具体的には、アメリカ合衆国における研究活動として、平成25年2月13日~2月19日にアメリカ・カリフォルニア州で現地調査を行い、授業実践例の収集や授業観察を行った。また、日本国内の研究活動においては、筑波大学、京都教育大学において協議会の実施(5月、平成25年2月)や、国際理解教育学会(7月)、日本社会科教育学会(9月)、全国社会科教育学会(10月)への参加を通して、授業実施のための意見交換、検討を行った。また、所属研究機関と関係する群馬大学教育学部附属小学校教諭からの意見も聴取した。さらには、文献調査として、日本の小中社会科教科書における環境学習の分析も行っている。 以上の活動によって、日本における環境リテラシー学習の構築のためには、まずは社会科系教科の主に地理的内容と係る「人間社会と自然環境の関係性」の学習内容を見直し実施する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ヒューマン・エコロジーを基盤とした環境リテラシーの5つの視点(「システムとしての環境」「社会的な価値と原理の環境への影響」「市民の権利と環境」「環境に関する行動効果の検証」「環境に対する個人・市民の責任んも受け入れ」)を、授業実践レベルで検討し、さらには、アメリカ合衆国・カナダにおける環境リテラシー学習と日本における環境リテラシー学習の相違点とその要因を探ることを目的としていた。その目的に対して、「おおむね順調に進展している」理由は、次の2点である。 1つは、アメリカと日本において、「授業実践レベル」で環境リテラシー学習実践を検討できたことである。当初の予定にあったカナダには、本年度も訪問することができなかったが、すでに何度も交流をもっているアメリカ・カリフォルニア州では、十分な調査を行うことができた。また、日本における調査も、授業実践を行うことができなかったものの、開発した授業に対して十分な検討を行うことができた。さらに、アメリカと日本の現地調査で収集した資料等の分析も進んだことで、おおむね順調に進展しているといえる。 もう1つは、アメリカと日本の環境リテラシー学習の相違点が、ヒューマン・エコロジーを基盤とした環境リテラシーの5つの視点の導入の仕方に違いがあり、その要因が社会科系教科における地理的内容の相違にあることが明らかにできたことである。この成果は、次の研究課題に取り組むための重要なものである。この研究成果を公表するには、より詳細な分析を行うことが必要となるが、次年度に公表する予定である。さらには、この研究成果は、日本の環境教育および社会科教育の進展のために大いに役立つものと考える。 以上のことから、研究目的の達成度は、「おおむね順調に進展している」ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究成果の公表を中心に活動を行う予定である。 まず、これまでに開発検討した環境リテラシー学習社会科単元を整理し、事例単元のデータベース化を図り、学会における研究発表や協議会の開催を通して、多くの学校教育関係者への普及を図る。このデータベースの作成によって日本型環境リテラシー学習の構築とする。また、昨年度の研究結果として明らかとなったアメリカと日本の地理教育におけるヒューマン・エコロジー(人間社会と自然環境の関係性)の扱いの相違についても詳細に分析し、発表する予定である。 次に、具体的な研究成果①~④を以下の学会の研究大会で発表する予定である。日本においては、①アメリカの環境リテラシー学習実践の総括を日本環境教育学会(7月5日6日びわこ成蹊大学)で、②地理教育におけるヒューマン・エコロジーの扱いについて日本地理教育学会(8月24日25日佐賀大学)で、③日本の環境リテラシー学習実践について日本社会科教育学会(10月26日27日山形大学)で発表する。外国においては、④アメリカと日本の環境リテラシー学習の比較分析の成果をNorth American Association of Environmental Education(10月アメリカ合衆国・メリーランド州ボルチモア市)の研究大会で研究発表を行う。また、研究成果の発表に向けて、必要に応じて国内外において追加調査や文献調査を行うこととする。 そして、上記の研究発表をまとめ、日本型環境リテラシー学習の意義や可能性について考察するとともに、日本における環境リテラシー学習の具体的あり方と今後の課題を提出する。成果の公表は、活字媒体による報告書形式のものと、マルチ・メディアによるものと、それを基にインターネット上で公開するものと、3種類の公表の方法をとる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究成果の公表を中心に研究活動を行うため、旅費(60万円)、設備備品および消耗品費(35万円)、その他経費(5万円)に分け、以下のような使用計画とする。 まず旅費として、60万円を執行する予定である。うち20万円は、国内旅費(協力校への旅費、日本環境教育学会(滋賀県大津市)・日本地理教育学会(佐賀県佐賀市)、日本社会科教育学会(山形県山形市への参加発表旅費)として使用する。残りの45万円は、外国旅費(アメリカ・カナダ)として使用する。なお、これまでアメリカ合衆国を研究活動の中心としてきたが、必要に応じてカナダへの訪問も検討中である。 次に設備備品および消耗品費として、35万円を執行する予定である。うち15万円は、研究成果の発表用として液晶プロジェクター(EPSON EB-1771W)を、残り20万は、環境教育・社会科教育関連図書(約20冊)や印刷用紙、CD-ROMおよびDVD-ROM、事務用品(トナーインク等)の購入に充てる。 そして、その他経費として、複写費および通信費等のために、5万円使用予定である。
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