本年度は最終年度のため、これまで行ってきた作文調査結果の分析と研究の総括を行った。主たる研究成果は以下の3点である。 (1)英国ウェストミッドランド州の初等学校において、低学年児童40名を対象に作文調査を行った。実施時期や対象児童の書きやすさを考慮し、夏休みの計画を、異なる2種の相手に向けて書き分けるという作文課題を設定した。 (2)上記調査結果と、平成25年度実施の日本人児童対象の作文調査結果(小学校低学年)を、比較・分析した。その結果、低学年児童の文章表現においては、相手意識の表出に次のような日英間の差異が見られた。①英国人児童は、相手(読み手)が誰であっても作文のトピックを変化させることがほとんどないのに対し、日本人児童は、トピックそのものを相手によって変化させる傾向が強い。②日本人児童は、表現面において漢字使用に配慮が集中する傾向にあるのに対し、英国人児童は、固有名詞や語句についての補足情報の有無で配慮を行う傾向が見られた。これらの成果及び日英間の違いの背景については、現在分析を継続しており、投稿準備中である。 (3)平成25年度実施の日本人児童対象の作文調査結果(小学校低~高学年)を、発達的観点から分析した。その結果、児童の相手意識は、以下のように段階的に文章表現に表出することがわかった。①トピックの選択→②語句・表記レベルの選択→③文・構成レベルの配慮。この成果については、国際幼児教育学会の機関誌『国際幼児教育研究』において発表した。
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