研究課題/領域番号 |
23730825
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森田 真吾 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10361403)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 作文指導 |
研究概要 |
本研究は、学習者の文章中に見られる「文法的な書き誤り」について、従来の否定的な捉え方を改め、積極的に作文指導の中に位置づけることの意義を明らかにすることを目的としている。その目的を遂行するために、今年度(平成23年度)は、学習者の文章表現に見られる「文法的な書き誤り」研究の再検討を行うこととした。これまでの作文指導・文法指導の中で、学習者の文章中に見られる「文法的な書き誤り」がどのように位置づけられてきたのか、その歴史的な経緯に対して検討を行い、その妥当性について論じることとした。そうした検討を行うにあたって、まずは資料収集に努めた。収集した資料は次の通り。(1) 教科書関係資料…明治~昭和戦前期における国定教科書・国語読本など。正しい文体というものを学習者の目に触れるレベルで具体的に提示したものとしてこれらの資料を位置づけ、その内実を明らかにするための検討を行った。 (2) 文法指導関係資料…明治~昭和戦前期に刊行されていた文法の教科書を中心に資料収集を行った。いわゆる「文語文」を書くことが指導目標とされていた当時において、文法レベルでどのように「書き誤り」を規定しようとしていたのかを明らかにするために検討を行った。(3) 日本語誤用分析関係資料…日本語学の分野で「誤用」がどのように分析されているかを確認するために資料収集を行った。これらにおいては主に非母語話者の誤用が分析対象となっており、母語話者の誤用を考える手がかりとなり得ることが確認できた。 以上の資料に基づき検討を行った結果、これまでの作文指導において認められようとしてきた「書き誤り」はそれぞれの時期における文体状況における「規範」の推移によって揺れが見られることが確認され、それに連動することによって文法指導の内容もも明瞭性・指導容易性とともに「規範性」を獲得するに至ったのではないかとの結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1年目の本年度は、これまでの国語科指導の歴史において学習者の書き誤りがどのように位置づけられようとしてきたのかについて検討を行うことを中心課題とし、主に文法指導の歴史をふまえながらの指摘は行うことができたが、やはり作文指導の方面からの考察が十分行われたとは言い難い状況である。文法指導・作文指導両面からの検討を行いつつ、成果を公表していくことを今後は心がける。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、実際の小学生ならびに中学生に「文法的な書き誤り」にこだわらずに自由に文章を書いてもらい、その内容を分析することによって、そうした文章を書く行為の有する作文指導における有効性を明らかにすることを目指す。附属学校・近隣の小中学校に協力を求め、子どもたちに文章を書いてもらう機会を多く持ち、その内容分析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費については、昨年度収集を行った資料による検討結果等を積極的に公表していくために使用することを計画している(学会発表や研究成果物の刊行など)。また、次年度使用額については、昨年度に予定していながら震災の余波などで実施することのできなかった授業視察(特色ある作文指導を行っている学校の研究授業を参観する)に充てることとする。
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