研究課題/領域番号 |
23730826
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
宮川 健 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (30375456)
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キーワード | 証明 / 数学教科書 / 教授人間学理論 / 中学校 / 国定カリキュラム / フランス / アメリカ |
研究概要 |
本研究は,日本・フランス・米国の中等教育(主に前期)における証明の実際の扱い(生態)と,それぞれの扱いを生じさせている様々なレベルの条件と制約(数学的,カリキュラム的,社会的,etc.)を,各国の数学教科書と国定カリキュラムの分析を通して,明らかにすることを目的とする.この目的を達するため,これまで,1)教科書等の資料収集,2)先行研究の収集とレビュー,3)本研究が依拠する「教授人間学理論」にもとづいた分析枠組みの構築,4)フランスと米国,日本の場合における教科書と国定カリキュラムの分析をそれぞれ部分的に実施してきた.平成24年度は特に3)と4)を進めるとともに,研究成果を国際会議等で発表してきた.本研究では,4)が中心的な課題となるが,これまでフランスと日本の場合の分析を中心に進めてきており,米国の場合の分析はまだ十分になされていない.これは,フランスと日本の場合の分析を通して3)の分析枠組みの構築を進めてきたからである.しかしながら,フランスと日本については,大変興味深い結果が出てきている.例えば,日仏では,中学校数学における証明の形態が異なり,それにより数学の営みにおいて証明が果たす機能が異なること,両国の国定カリキュラムがそれぞれ意図している証明の必要性や役割が異なること,などが明らかになってきた.平成24年度はこうした結果を,国際数学教育心理学会第36回年会(PME 36)の論文発表(査読有り),第12回数学教育世界会議(ICME 12)のポスター発表,日本数学教育学会誌などで発表した.そして現在,これらの分析結果をさらに精緻化することにより,国際学術誌へ論文を投稿する準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,おおむね順調に研究を進めることができた.特に,日仏の学校数学における証明の生態は,かなり明確になってきた.そのため,「研究実績の概要」で述べたとおり,国内学会誌を始め,国際学会等で研究成果を発表できた.このことは,十分満足できる結果と考える.ただ,米国の教科書やカリキュラム等の資料の分析がまだ十分になされておらず,課題として残った.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度まで,フランスと日本の場合に焦点を当てた教科書や国定カリキュラムなどの資料の分析を中心的に進め,米国の資料については仮分析を進めてきた.平成25年度は,本研究の最終年度であり,フランスと日本の資料の分析をより精緻化するとともに,米国の資料を本格的に分析していく.そして,研究の成果を論文としてまとめ,国内外で発表する.ただ,三ヶ国の比較分析については,米国の資料の分析がまだ十分になされていないため,平成25年度中にどこまでできるか不明である.まずは,これまで進めてきた日仏の比較分析をしっかり終わらせ,研究成果を論文として国際学術誌に投稿する.そして,それから三ヶ国の比較分析に取り組む予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年4月に参加予定の「教授人間学理論国際会議」の参加費の執行がまだなされていないため.この会議はこれまで2月に開催されてきたが,平成25年は4月に開催されることとなったため,平成24年度の研究費の残額が生じた.
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