〇最終年度に実施した研究の成果 平成23年度の成果を基に、基礎調査を進め改訂教材作成及び実践を行い、研究成果を論文等に発表した。 画像収集を続けると共に、実作品を目視して様式分析及び教材に用いる画像の適切性を検証した。さらに、日本美術史文献を調査し、様式記述における感情語の増加傾向を指摘した。SD法を用いて小学生から専門家まで仏像各様式に対して似た感情を持つことを明らかにした。以上を踏まえて改訂教材作成及び実践を行った。実践は、①島根大学教育学部附属小学校及び中学校、②茨城大学教育学部附属小学校及び中学校、③島根県奥出雲町立八川小学校・浜田市立上府小学校、④茨城県つくば市立豊里中学校で行った。小中学校の全学年において、様式の理解と楽しさの両面でその教育的有効性を実証できた。これによって、この方法の妥当性に偶然や地域によらない確実性と一般性をもたせることができた。研究成果は、『美術教育学』第34号(平成25年3月)における論文発表、第35回美術科教育学会島根大会(平成25年3月)における口頭発表で提示した。また奥出雲町立八川小学校の校内研修会(平成24年10月)でこの方法を講演し、小学校教員の賛同を得た。 〇研究期間全体を通じて実施した研究の成果 日本美術の鑑賞教育及び言語活動を活かした美術教育は未だ十分に解明されていないので、本研究は日本美術の諸様式を言語化して学ぶ鑑賞教育方法を考案して実践し、その方法の教育的有効性を実証した。基礎的研究では、日本の仏像彫刻・絵画の様式及び代表作を選定してキャッチフレーズ化すると共に、美術史記述における感情語使用の増加傾向、SD法を用いた仏像様式感情の分析から小学生から専門家まで似た感情を持つことを解明した。以上を基に、カルタやクイズ等を用いた教材を作成し、小中学校の全学年で実践した結果、様式の言語化を軸とする鑑賞教育方法の有効性が明らかになった。
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