本研究では,ビリーフの構造と変容について,1)まず,児童生徒の社会科学習のビリーフを把握するための質問紙を開発したこと,2)これによって,児童生徒のビリーフの構造について知ることができるということ,3)また,それを経年的に用いることで,変容を把握することができることである。 最終年度では,中学校3年生の生徒に1年間のビリーフの変化を把握する縦断的研究を行い,生徒らのビリーフの変化と,そこに携わる教師の影響,教師の指導のあり方について考察を進めた。 ここから,生徒らの社会科学習のビリーフを,よりよいものに変化させていくための教育的示唆として,a)教師は自身の社会科における教育目標を,単元や授業のレベルで暗示的に入れ込むだけではなく,「学習活動」や「言葉がけ」のレベルにも意識的に入れ込むこと。それによって指導の場で柔軟に取り扱うことができ,それによって継続的実施が可能となる。b)教師自身の社会科教育目標観の確立が重要であること。a)で述べたような学習活動や言葉がけは自由度が高く状況的側面が強い。だからこそ,「今-ここ」での社会科授業としての判断指針となる教師自身の教育目標観確立が重要だと考えられる。c)自身の社会科授業だけでなく,学校カリキュラムとしての教育目標との一致をはかること。学校カリキュラムという教育環境を主体的に推進できる立場であり,結果的に社会科での学習の語りと学校全体での取り組みが一致し,子どもたちにその価値観が受容されやすい風土となることは重要だといえる。 本研究は,ビリーフの変容を把握するということから,結果として質的研究の要素が強いものとなった。そのため,ここでの成果はあくまで事例的なものであり,一般化を図るためには,さらなる事例の蓄積が必要である。
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