研究課題/領域番号 |
23730837
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福田 喜彦 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30510888)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歴史教育 / 歴史教育情報 / メディア / 学知 / 教育雑誌 / 昭和戦前期 / 東京高等師範学校 / 歴史授業 |
研究概要 |
本研究の目的は,昭和戦前期の歴史教育情報メディアにおける学知の体系化を図ることである。本研究で取り上げる歴史教育情報メディアとは,昭和戦前期に刊行された歴史教育に関する雑誌とその刊行物である。本研究では,昭和戦前期に活躍した歴史教師たちが歴史教育に関する学知をどのように創出しながら,自らの歴史授業へと生かしていったのかを解明する。 平成23年度は,『歴史教育講座』(全14集)の分析を行い,本講座の全14集の執筆者と冊子をデータベース化した。本講座は,各集ごとに「理論編」「資料編」「方法編」で構成されているが,本年度は,「資料編」を取り上げてデータベース化した。「資料編」には,各時代を専門とする代表的な歴史学者が執筆を担当している。具体的な執筆項目を見てみると,「古代史」「飛鳥奈良時代史」「平安時代史」「鎌倉時代史」「室町時代史」「吉野時代史」「安土桃山時代史」「江戸時代史」「明治維新史」「現代史」などが執筆されていた。ここでは,歴史学者がそれぞれの時代をどのように描いていたのかを明らかにすることで,国史科を担当した初等教員がどのような時代像をもって歴史授業に取り組んでいたのかという「歴史学」と「歴史教育」の接点を把握することができた。また,『歴史教育講座』では,「歴史学」のみの学知だけでなく,考古学や民俗学,国文学といった他の分野の学者たちも学知を提供していた。「資料編」には,「政治法制史」「社会史」「経済史」「外交史」「思想史」「宗教史」「韻文学篇」「散文学篇」「美術史」「考古学」「民俗学」「朝鮮史」などが執筆されている。昭和戦前期の初等教育では国定教科書をもとに歴史授業が行われていたが,これらの分析を通して,初等教員たちが教材研究を進める上で,どのように多様な学問的成果を『歴史教育講座』から創出していたのかを解明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,『歴史教育講座』(全14集)の分析を行い,本講座の全14集の執筆者と冊子をデータベース化に取り組んだ。本講座は,各集ごとに「理論編」「資料編」「方法編」で構成されているが,本年度は,「資料編」を取り上げてデータベース化することができた。 それによって,「資料編」には,各時代を専門とする代表的な歴史学者が執筆を担当していることが判明した。具体的な執筆項目を見てみると,「古代史」「飛鳥奈良時代史」「平安時代史」「鎌倉時代史」「室町時代史」「吉野時代史」「安土桃山時代史」「江戸時代史」「明治維新史」「現代史」などが執筆されていたことが判明した。また,歴史学者がそれぞれの時代をどのように描いていたのかを明らかにすることで,国史科を担当した初等教員がどのような時代像をもって歴史授業に取り組んでいたのかという「歴史学」と「歴史教育」の接点を把握することも可能となった。さらに,『歴史教育講座』では,「歴史学」のみの学知だけでなく,考古学や民俗学,国文学といった他の分野の学者たちも学知を提供していたこともわかった。 このように,「資料編」には,「政治法制史」「社会史」「経済史」「外交史」「思想史」「宗教史」「韻文学篇」「散文学篇」「美術史」「考古学」「民俗学」「朝鮮史」などが執筆されていることがわかった。昭和戦前期の初等教育では国定教科書をもとに歴史授業が行われていたが,これらの分析を通して,初等教員たちが教材研究を進める上で,どのように多様な学問的成果を『歴史教育講座』から創出していたのかを解明することができた。 以上の理由により,「昭和戦前期の歴史教育情報メディアにおける学知の体系化を図る」という本研究の目的と照合して,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,前年度に続いて『歴史教育講座』(全14集)を分析するとともに,『実践国史教育体系』(全10巻)の分析も行う。これらの分析を通して,昭和戦前期の歴史教育の理論的な学知の体系化を図る。また,歴史教育研究会が刊行した著作物についても収集・分析する。前年度と同様に本年度においても,国立国会図書館や大学図書館,各種研究機関などにも出向いて関連する歴史教育関係の図書を収集する。本年度の研究は,以下に示した手順をもとにして進める。 平成24年度は,「理論編」を取り上げてデータベース化する。「理論編」には,帝国大学や高等師範学校の教授たちが主に執筆を担当している。具体的な執筆項目を見てみると,「歴史教育原論」「最近歴史教育思潮」「日本歴史教育史」「最近教育思潮と歴史教育」「女子教育と歴史教育」「外国史教育論」「歴史の学習心理に関する二三の問題」「国史教育に於ける学力測定」「海外歴史教育展望」などが執筆されている。ここでの分析視点は,(1)国内外の歴史教育に関する動向をどのように捉えていたのか,(2)歴史学習への心理学的なアプローチや成績評価はどのように考えられていたのか,(3)歴史教育の理論の学術的背景は何だったのか,(4)歴史教育で「女子教育」や「郷土史」といった時事問題的な教材はどのように取り扱われていたのかの4つの視点である。 これらの課題を検討するために,『実践国史教育体系』の関連する刊行物も分析する。史資料の収集が予定通り進まない場合の対応策としては,当時刊行された書籍も収集し,『歴史教育講座』を補完して考察する。また,歴史教育研究会は,『研究評論歴史教育』や『歴史教育講座』の刊行とともに,雑誌での特集から著作物を公刊している。これらの著作には,雑誌の内容が発展的にまとめられており,初等教員の教材研究のために活用されていたと推察できるため,これらの著作物も収集しながら検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画で取り上げた著作物や歴史教育雑誌の収集及び整理,電子媒体によるデータベース化,歴史教育の理論と実践の分析及び体系化の基礎的作業,原史資料の劣化や散逸の防止,本研究での史資料の活用の効率性の向上などの目的のために,以下の研究経費を計上している。 (1)パソコン購入費,(2)データベースソフト購入費,(3)学会参加費(旅費を含む),(4)カラーレーザー複合機購入費,(5)ホームサーバー購入費,(6)バックアップ用HDD購入費,(7)報告書作成費用,(8)印刷費,(9)複写費,(10)通信費,(11)史資料購入費,(12)歴史教育関連図書及び社会科教育関連図書購入費,(13)史資料収集旅費 その経費の内訳として,本研究で必要となる史資料の収集・整理のために,(11),(12),(13)などの経費,収集した史料を電子媒体で記録し,データベース化を行い,整理・保管するに当たり,(1),(2),(5),(6)などの経費,高機能カラーレーザー複合機を活用した史資料の読み取り,研究成果の学会報告及び発信のために,(3),(4),(7),(8),(9),(10)などの経費などを計上していたが本年度,購入できなかった物品を購入する費用として,本年度計上された経費を次年度の研究費としても使用する計画である。
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