研究課題/領域番号 |
23730837
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福田 喜彦 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30510888)
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キーワード | 歴史教育 / 歴史教育情報 / メディア / 学知 / 教育雑誌 / 昭和戦前期 / 高等師範学校 / 歴史授業 |
研究概要 |
本研究の目的は,昭和戦前期の歴史教育情報メディアにおける学知の体系化を図ることである。本研究で取り上げる歴史教育情報メディアとは,昭和戦前期に刊行された歴史教育に関する雑誌とその刊行物である。本研究では,昭和戦前期に活躍した歴史教師たちが歴史教育に関する学知をどのように創出しながら,自らの歴史授業へと生かしていったのかを解明する。 平成24年度は,前年度に続いて『歴史教育講座』(全14集)を分析するとともに『実践国史教育体系』(全10巻)の分析も行った。これらの分析を通して,昭和戦前期の歴史教育の理論的な学知の体系化を図った。また,歴史教育研究会が刊行した著作物についても収集・分析した。特に,本年度は,「理論編」を取り上げてデータベース化した。「理論編」には,帝国大学や高等師範学校の教授たちが主に執筆を担当していた。具体的な執筆項目を見てみると,「歴史教育原論」「日本に於ける歴史教育の基調」「最近歴史教育思潮」「日本歴史教育史」「現代歴史学思潮」「日本に於ける史学理念の展開」などが執筆されていた。本年度の分析視点は,歴史学習への心理学的なアプローチや成績評価はどのように考えられていたのか,歴史教育で「女子教育」や「郷土史」といった時事問題的な教材はどのように取り扱われていたのかであった。これらの課題を検討するため,『実践国史教育体系』の関連する刊行物として,栗田元次(広島高等師範学校教授)『国史教育の本質(第1巻)』,高橋俊乗(京都帝国大学講師)『教育思潮と国史教育(第2巻)』,石山脩平(東京高等師範学校教授)『国史教育と解釈学(第3巻)』,丸山良二(東京高等師範学校講師)『国史学習の心理(第4巻)』などの歴史教育の理論書や歴史教育研究会の『女性史研究』も検討した。その結果,昭和戦前期の初等教員における歴史教育に関する理論的学知の創出過程について明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,前年度に続いて『歴史教育講座』(全14集)を分析するとともに,『実践国史教育体系』(全10巻)の分析も行い,これらの分析を通して,昭和戦前期の歴史教育の理論的な学知の体系化を図ることができた。特に本年度は,「理論編」を取り上げてデータベース化に取り組んだ。 「理論編」には,帝国大学や高等師範学校の教授たちが主に執筆を担当していることが判明した。具体的な執筆項目を見てみると,「歴史教育原論」「最近歴史教育思潮」「日本歴史教育史」「現代歴史学思潮」「最近教育思潮と歴史教育」「我が国に於ける国家意識の発展」「国民教科としての歴史教育」「女子教育と歴史教育」「外国史教育論」「歴史の学習心理に関する二三の問題」「国史教育に於ける学力測定」などが執筆されていたことがわかった。そこで,本年度の分析視点として,①歴史学習への心理学的なアプローチや成績評価はどのように考えられていたのか,②歴史教育で「女子教育」や「郷土史」といった時事問題的な教材はどのように取り扱われていたのかといった2つの観点から考察を進めた。まず,これらの課題を検討するため,『実践国史教育体系』の関連する刊行物として,栗田元次(広島高等師範学校教授)『国史教育の本質(第1巻)』,高橋俊乗(京都帝国大学講師)『教育思潮と国史教育(第2巻)』,石山脩平(東京高等師範学校教授)『国史教育と解釈学(第3巻)』,丸山良二(東京高等師範学校講師)『国史学習の心理(第4巻)』などの歴史教育の理論書を検討した。加えて,歴史教育研究会の『女性史研究』も検討した。その結果,昭和戦前期の初等教員における歴史教育に関する理論的学知の創出過程について明らかにすることができた。 以上の理由により,「昭和戦前期の歴史教育情報メディアにおける学知の体系化を図る」という本研究の目的と照合して,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,前年度に続いて『歴史教育講座』(全14集)を分析するとともに,実践的な学知の創出と形成の過程に焦点を当てて,『実践国史教育体系』(全10巻)の分析を行う。本年度の研究は,以下に示した手順をもとにして進める。 本年度は,「方法編」を取り上げてデータベース化する。「方法編」には,帝国大学や高等師範学校の教授たちが執筆した「歴史教育関係教材」と高等師範学校附属小学校の訓導や中学校の教諭たちが執筆した「標準小学国史指導案」の2つがまとめられている。具体的な執筆項目を見てみると,「歴史教授法概論」「歴史の新指導法と其の機構」「国民精神関係教材」「思想史宗教史関係教材」「社会史経済史関係教材」「芸術史関係教材」「外来文化及内鮮関係教材」「歴史考査法」「郷土史指導上の諸問題」などが執筆されている。そこで,まず,学問的な成果がどのように歴史授業として教材化されていったのかを検討する。次に,「標準小学国史指導案」の各学年の各課ごとの「題材」「要旨」「教材観」「実践指導」「準備」「時間配当及び区分」といった項目を分析する。「指導案」には,「教材配当表」が示され,尋常科5・6年生と高等科1・2年生向けに月毎の「指導案」が提供されている。そこで,高等師範学校附属小学校の訓導らが執筆した『実践国史教育体系』の以下の巻と合わせて,歴史教育の実践的な指導法がどのように提示されていたのかを検討する。具体的には,大松庄太郎(奈良女子高等師範学校訓導)『国史教育の学年的発展(第5巻)』,大久保馨(広島高等師範学校訓導)『国史教育と指導過程(第6巻)』,大島信一(広島高等師範学校訓導)『国史教育実践諸問題II(第10巻)』,桜井勝三(東京女子高等師範学校訓導)『国史教材の類型と其指導(第7巻)』,宮腰他一雄(東京高等師範学校訓導)『国史教育実践諸問題I(第9巻)』をなどを手がかりにして考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画で取り上げた著作物や歴史教育雑誌の収集及び整理,電子媒体によるデータベース化,歴史教育の理論と実践の分析及び体系化の基礎的作業,原史資料の劣化や散逸の防止,本研究での史資料の活用の効率性の向上などの目的のために,以下の研究経費を計上している。 ①パソコン購入費, ②データベースソフト購入費, ③学会参加費(旅費を含む), ④カラーレーザー複合機購入費, ⑤ホームサーバー購入費, ⑥バックアップ用 HDD購入費, ⑦報告書作成費用, ⑧印刷費, ⑨複写費, ⑩通信費, ⑪史資料購入費, ⑫歴史教育関連図書及び社会科教育関連図書購入費, ⑬史資料収集旅費 その経費の内訳として,本研究で必要となる史資料の収集・整理のために, ⑪, ⑫, ⑬などの経費,収集した史料を電子媒体で記録し,データベース化を行い,整理・保管するに当たり, ①, ②, ⑤, ⑥などの経費,高機能カラーレーザー複合機を活用した史資料の読み取り,研究成果の学会報告及び発信のために, ③, ④, ⑦, ⑧, ⑨, ⑩などの経費などを計上していたが本年度,購入できなかった物品を購入する費用として,本年度計上された経費を次年度の研究費としても使用する計画である。
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