本研究の目的は,昭和戦前期の歴史教育情報メディアにおける学知の体系化を図ることである。本研究で取り上げる歴史教育情報メディアとは,昭和戦前期に刊行された歴史教育に関する雑誌とその刊行物である。本研究では,昭和戦前期に活躍した歴史教師たちが歴史教育に関する学知をどのように創出しながら,自らの歴史授業へと生かしていったのかを解明する。平成25年度は,「方法編」を取り上げてデータベース化した。「方法編」には,帝国大学や高等師範学校の教授たちが執筆した「歴史教育関係教材」と高等師範学校附属小学校の訓導や中学校の教諭たちが執筆した「標準小学国史指導案」の2つがまとめられていた。具体的な執筆項目を見てみると,「歴史教授法概論」「歴史の新指導法と其の機構」「国民精神関係教材」「思想史宗教史関係教材」「社会史経済史関係教材」「芸術史関係教材」「外来文化及内鮮関係教材」「歴史考査法」「郷土史指導上の諸問題」などが執筆されていた。ここでは,まず,学問的な成果がどのように歴史授業として教材化されていったのかを検討した。次に,「標準小学国史指導案」の各学年の各課ごとの「題材」「要旨」「教材観」「実践指導」「準備」「時間配当及び区分」といった項目を分析した。「指導案」には,「教材配当表」が示され,尋常科5・6年生と高等科1・2年生向けに月毎の「指導案」が提供されていた。そこで,高等師範学校附属小学校の訓導らが執筆した『実践国史教育体系』の以下の巻と合わせて,歴史教育の実践的な指導法がどのように提示されていたのかを検討した。その結果,昭和戦前期の初等教員における歴史教育に関する実践的学知の創出過程について明らかにすることができた。
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