研究課題/領域番号 |
23730840
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
北上田 源 琉球大学, 大学教育センター, 非常勤講師 (00596059)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教科教育学 |
研究概要 |
平成23年度(1年目)は、当初の計画どおり、アメラジアンスクール生徒保護者を対象とした生活環境/言語使用状況に関する調査を行い、同校の中学生を対象とした社会科授業を行うための社会科(地理)教材の作成/授業実践を行った。 保護者を対象としたインタビュー調査では、生徒の多くが国内外/県内外/基地内外の様々な学校を移動してきたこと、さらには家庭環境により家庭での言語使用状況も大きく異なることが明らかになった。また、経済的な理由から保護者の多くが生徒の進学先として県内の公立高校を希望していることもわかり、本研究で対象としている「移動する子どもたち」の具体像を把握することができた。こうした「移動する子どもたち」の進学までを視野に入れた教材作成/授業実践とその効果の検証を行った研究はほとんどなく、本研究は重要な意義をもったものになると考えられる。 上記インタビュー調査の結果をもとにして作成した教材は、生徒の移動歴/言語能力の多様性に配慮するとともに、生徒の高校進学に向けた学力の定着を意図したものとした。具体的には、日本語教育における「リライト教材」作成の手法を参考にし、社会科教科書のリライトを行い、同時にグラフや図の読みとりの作業を教材の中心として配置することで、生徒の言語力の多様性に配慮した。また、学習内容は平成24年度から実施される新学習指導要領に沿う形にして、進学に向けた生徒の学力育成を図るとともに、積極的に在日外国人が抱える課題を取り上げることで、生徒が自分のことと関連付けて学べるような工夫も行った。こうした形で、日常的に「移動する子どもたち」の学びを支えるための教材の作成/効果の検証を行う点に本研究の重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた社会科教育研究会における教材検討、公立学校での授業実践、教材の報告会は行うことができなかった。これは、アメラジアンスクールにおける授業実践の開始が遅れたことと、公立学校における「移動する子どもたち」をとりまく環境が十分に把握できなかったことに起因する。 アメラジアンスクールでの授業実践は、保護者を対象としたインタビュー調査が終了してから開始した。そのため、授業実践が終了するのが年度末になってしまい、年度内に公立学校での授業実践、教材についての報告会を行うことができなかった。 また、当初は公立学校の社会科教員と連携して公立学校での授業実践を行う計画を立てていたが、本研究において対象としている「移動する子ども」は、連携している学校では日本語教室で日本語教育を中心とした学習を行っていることがわかった。そのため、作成した教材についても社会科の観点からだけでなく、日本語教育をはじめとした多様な視点から検討する必要性が生じたが、年度内にはその体制を十分に整えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度のインタビュー調査の結果を参考にしながら、年度当初からアメラジアンスクールにおける授業実践(歴史)を行う。それにより、年度後半には公立学校における授業実践を行うことも可能となる。 また、アメラジアンスクールが所在する市の教育委員会とも連携しながら、市内小中学校の日本語教室の担当教員と研究代表者を含めたアメラジアンスクール日本語教員が参加する情報交換会を定期的に開催するための準備を進めている。社会科教育や日本語教育などの研究者にも、この情報交換会に参加してもらうことで、より多様な視点から教材を研究することが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、調査員の帰郷に合わせてインタビュー調査を行ったため、当初予定していた調査員の旅費を使う必要がなかった。 一方で、公立学校の教員と相談する中で、教材が冊子としてまとまっていた方が授業に利用しやすいとの声があったため、「次年度使用額」で教材の冊子化を行い、公立学校での実践がよりスムーズに行えるようにする。
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